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2024.02.01

アパレル・ファッション業界×転職市場 2023年振り返りと2024年の展望~事業責任者×マネージャー座談会

昨年、2023年は求人倍率が過去最高となり、転職希望者優位の市場は変わりませんが、その中でもさまざまな変化が見られました。そこで今回は、2023年アパレル・ファッション業界 転職マーケットの振り返りと、2024年の展望、そして転職活動やキャリアとの向き合い方について、クリーデンス事業責任者の荒木マネージャーの井出アシスタントマネージャーの小口の3名で座談会を行いました。ぜひご覧ください。


人員充足やベースアップなどを背景に、採用を慎重に検討する企業が今後増えるのではないか

編集

昨年の座談会で、23年は「継続して企業の採用ニーズは高い」と予測しましたが、振り返っていかがでしょうか?

荒木

23年全体で見ると、前半と後半で潮目がかなり変わりました。
6~7月ごろまでは、コロナ禍後半の流れがまだ残っており、落ち込んだ売上を取り戻し、新たな一歩を踏み出すために、出店や増床、ポップアップなど、積極的にアクセルが踏まれていました。それに伴い採用方針も、22年から引き続き「不足している人材を採用して体制を整える」という企業が多かったと感じています。
8月以降は、企業ごとの状況がより顕著化してきた印象です。出店や増床など、攻めの姿勢で大量採用を継続している企業もありますが、体制構築が落ち着き、この先の採用は慎重に検討したい、という企業も増えてきました。

編集

「慎重に検討」というのは、具体的にどのようなスタンスでしょうか?

荒木

企業ごとに異なりますが、たとえばそのひとつに「ベースアップ(賃上げ)」があります。インフレ対策や、従業員のエンゲージメント向上などを理由に、次の期が変わるタイミングでベースアップに踏み切る企業が増えるのではないかと考えられます。
また、日本全体がベースアップしていくことで、低金利政策の解除や、それによる円安の下げ止まり、インバウンド停滞…など、大きく市場変化する可能性を秘めているのが現状です。
さらには、ベースアップによって適切な購買行動に繋がっていくという見方もあります。インフレによって買い控えていた消費者の動きが活性化し、アパレル・ファッション業界にとって追い風となる要素は十分にあるでしょう。

編集

さまざまな要素があり、どう影響し合うか、という見極めが難しいということですね。

荒木

経済情勢にはさまざまな見立てがあり、ここで挙げたものはあくまでひとつの考えですが、アパレル・ファッション業界に限らず、日本全体におけるマーケットの潮目が読みにくいタイミングであることは間違いありません。
そのため、状況を見極めながら、適切な戦略を立てていこうという企業が増え、「ひとまず人を増やさなければ」というモードから、「ブランド・企業を今後さらに成長させるためには、どんな人材が必要か」というモードに切り替わり始めた、と捉えています。

編集

採用に対して慎重になってくると、ここ数年で増加していた、未経験・微経験からでも応募可能な求人は減ってくるでしょうか?

荒木

まだまだ人材不足の企業は多く、未経験採用を行っている企業も多いので、現時点で顕著に減少しているわけではありません。採用難易度の高い職種では、今後もポテンシャル採用を継続するケースもあるでしょう。
ただ、直近の数年がコロナ影響に伴う「採用バブル」であった点をふまえると、一時的に採用条件を広げていた企業が、再び経験者中心の採用に切り替えるケースは増えると思われます。

編集

そうした企業の動きはすでに見られていますか?

井出

コロナ禍で新卒採用をストップし、人材不足を中途採用で補っていた企業がいよいよ新卒採用を再開しました。それに伴って、「中途採用では経験者を採用したい」という流れが大手企業を中心に見られ始めています。


事業戦略や組織課題に対し「明確な強み」を持つ人材を求める傾向が高まっている

編集

では具体的な採用市場について、いくつかの職種やカテゴリーに触れながら伺います。まず販売職の動きはいかがでしょう?

井出

不足人材の確保をはじめ、出店や増床、代行店から直営店への切り替えに伴う増員など、販売職の採用は、22年から23年にかけてとても盛り上がりました。
新卒採用も含めて多くの採用が生まれる中で、ある程度人員が充足した企業も多く、次のフェーズとして採用したメンバーのマネジメントや育成ができるリーダーやマネジメント、さらにはトレーナーとしても期待できる人材を求める企業が増えました。

編集

関西や中部、九州などの地方エリアでは、東京圏と比較して異なる動きはありましたか?

小口

地方エリアも同様に販売職の採用は活況ですが、その分、競争率が上がっており、採用に苦戦している企業も多いです。求職者にとってはチャンスで、意欲の高い方々の転職が多数生まれました。関西では、東京圏と比べて観光目的のインバウンド回復が少し早く、通常スタッフの求人に加え、語学力を求める求人がいち早く増えました。
企業の採用が苦戦する中ですが、23年後半は採用ハードルが徐々に上がっているのを感じます。採用が厳しいからハードルを下げるといったことはなく、企業やブランドの状況に合わせて、一律で採用基準がマネジメントされているのを感じます。

編集

デザイナーをはじめ川上職種はいかがですか?

井出

22年までは、厳しい状況から抜け出すためのリブランディングに伴う採用ニーズが見られましたが、23年は新ブランド立ち上げニーズが増え、個人的に明るいニュースだと感じた1年でした。
ディレクターやMD、デザイナーなどの重要ポジションは、年収を引き上げてでも採用したいという声も上がっており、転職によって年収引き上げに成功した方もいらっしゃいました。もちろん求められるものもそれだけ高いですが、その分、やりがいも大きいと思います。

編集

クリーデンスでは、ハイキャリア専門チームがあり、多くのご相談が寄せられましたね。

井出

クリーデンスからのご支援では、年収600万円以上(ハイキャリア)のデザイナー転職実績が、22年下半期から23年上半期で約2倍に増えました。市場ニーズに対し、専門チームがお応えできたと思います。

小口

生産管理でも、22年下半期から23年上半期でハイキャリア転職実績が約1.7倍に増えました。生産管理に加えて品質管理まで担う求人が増え、より幅広い業務経験が求められていることが背景です。
また、企業やブランドがリブランディングなどに伴って商材の幅を広げたことで、服飾雑貨や生活雑貨などの品質管理人材を求める採用も見られました。材質や生産過程、SKUなどが洋服とは大きく異なるため、商材に詳しい専任スタッフを置きたいというニーズです。

編集

EC市場は引き続き右肩上がりに伸びています。採用も比例していますか?

井出

求人は継続して増加しています。業績好調に伴う増員が依然多いですが、採用が追いつかず社内の部署異動で体制を整えた企業が、規模拡大に伴い、いよいよ経験のあるプロを迎えたいというケースも増えています。そのため、運営スタッフよりも戦略や設計などができる上流の経験を持つ人材のニーズがより高まっています。

編集

Web・EC職種は、業界を問わず転職しやすいという側面もあります。

井出

おっしゃるとおり、より条件の良い他業界へ転職する方も多くいらっしゃいます。給与面はもちろんのこと、リモートワークの可否など環境面も大きな要素となっています。
ただ、条件を理由に他業界へ転職したものの、扱う商材に興味が持てず、アパレルに戻りたいという方も増えています。他業界も含めて可能性を広げることは大切ですが、本当に自分が大事にしていることは何か、最終的な決断は慎重に行うことをおすすめします。

編集

職種を問わず、時短希望の方は引き続き大勢いらっしゃいます。働き方の多様性に対し、企業の動きはいかがでしょうか?

井出

時短で転職に成功した方々の実績は一定ありますし、選考における企業からの評価がとても高く、フルタイム採用の予定が、応募者の希望を叶える形で時短契約に切り替えたケースもみられました。ただ、お預かりしている求人全体に対する割合を見ると、残念ながら大きな変化があったとはいえませんでした。

編集

23年1月、ファーストリテイリンググループが大幅ベースアップに踏み切ったニュースが大きな話題となりました。アパレル・ファッション業界全体でベースアップの動きはありますか?

井出

23年はファーストリテイリンググループ以外にも、一部の企業で販売職を含む社員のベースアップが行われました。その決断は、既存従業員のエンゲージメント向上はもちろんのこと、採用競争力という意味でも有利になります。いち早くベースアップに踏み切った企業の影響は大きく、人材確保を目的に、ベースアップを検討する企業は今後も増えると思います。

編集

どの企業がベースアップしたかを知る方法はありますか?

井出

ファーストリテイリンググループのようにニュースリリースを出すケースもありますが、公には発表しない企業もあるため、個人の情報収集だけでは難しい場合もあります。クリーデンスなどエージェントサービスにご相談いただければ、お伝えできる情報がたくさんありますので、うまくご活用いただくことをおすすめいたします。


「自分に合うかどうか」を見極めることの重要性がさらに高まっていく

編集

地に足の着いた採用を進める企業が増え、採用背景や基準にも、企業の個性が現れやすくなる…そうした市況感を踏まえた転職活動のポイントを教えてください。

小口

第一には、ご自身が転職で叶えたいことや、仕事を通じて実現したいことをしっかり棚卸し、優先順位を付けることです。その上で、企業や求人のことを詳しく知り、「自分に合うかどうか」を検討していくのが良いでしょう。

編集

どうすれば「自分に合うかどうか」が検討しやすくなるでしょうか?

小口

今後、世の中の動きに合わせてよりスピーディーかつチャレンジングに動く企業が増えることは間違いありません。そうした企業と一緒に頑張っていくイメージを持てるか?前向きに働きたいと思えるか?ということを考えてみてください。表面的な条件だけでなく、会社の想いや向かっている方向性、どんな社員が活躍しているか、今回の採用背景は何かなどを知ることで、「自分に合うかどうか」を考えやすくなると思います。
実は転職後、半年以内に早期退職されてしまう方の多くは、『入社前に聞いていたことと違う』『雰囲気が合わない』『思っていたのと違った』という理由なのです。「自分に合うかどうか」を見極めることの重要さを感じさせられます。

編集

実際、ご相談をいただく方々の転職理由はどういうものが多いのでしょうか?

小口

23年は、「年収を上げたい」というご相談がもっとも多かったです。 大きく2つのタイプがあって、ひとつは現職で自分の頑張りが認められないと感じており、適切に評価されればもっと年収を上げられるのではないか、というもの。もうひとつは、現職の給与水準が低く、今後上昇する見込みもない、物価上昇なども相まって切実に年収を上げたい、というものです。

編集

同じ「年収を上げたい」でも背景がかなり違いますね。

小口

前者は一見年収軸に見えますが、「自分の頑張りを認めてもらいたい」と、仕事のやりがいを大切にしていることが伺えます。このようなケースでは、仮に転職で年収が上がったとしても、ご自身の頑張りたいことと企業の方向性にギャップがあるとストレスになってしまう可能性があります。そのため、「自分は何を頑張りたいのか」「どんな仕事にやりがいを感じるのか」の掘り下げが大切です。

編集

仕事を頑張っているからこそ、評価されたいという思いに繋がるのですね。

小口

後者の方も、よくよくお話を伺ってみると、まったく畑違いの仕事をするつもりはない、という方が多いです。たとえば年収を上げるだけであれば、異業界の営業やインセンティブの高い仕事など、手段はたくさんありますが、本当にそれで良いのか?ということです。そこがぶれてしまうと、「こんなはずではなかった」となってしまいます。繰り返しになりますが、仕事をする上での優先順位を正しく整理することが重要なのです。

編集

なぜ、自身の棚卸と企業研究が大切なのか、よく分かりました。そして、求人票だけで判断するのは難しいとも感じました。

小口

求人票以外のリアルな情報を得るには、やっぱりエージェントだと思います。企業サイトやニュースのチェックは必須ですが、さらにエージェントに登録し、担当のアドバイザーが付くと、気になる企業の情報がいち早く手に入ります。ネットのクチコミ情報を重視する方もいらっしゃいますが、主観的で古い情報も多く、信頼に足るとは言えません。
ご自身の選択肢を増やすための手段として、まずはエージェントに登録して一度カウンセリングを受けてみるだけでも景色が広がると思います。

編集

先ほど、未経験・微経験の採用が落ち着く企業が増えるのでは、という話がありました。未経験だけどチャレンジしたい!という意欲の高い方に、アドバイスをお願いします。

小口

経験者を優先する企業は今後増えてくると思いますが、それでも未経験・微経験の求人がなくなるわけではありません。つねに求人へのアンテナを張っておくことをおすすめします。

未経験・微経験採用では、「企業のビジョンやこれからのチャレンジに合うかどうか」が重視されます。そのため、意欲は大前提として、これから何をしてどうなりたいか、そのために今頑張っていることは何か、キャリアの道筋を立てて客観的に伝えることが必要です。現在地だけでなく、少し先の目線を意識してください。
一方で、シンプルに「好き」「興味がある」という主観的な視点も大切に、日ごろからその感覚や知見を磨いていってください。強い思いや行動は、人の心を動かしますから。


変化のスピードが速いからこそ、ポータブルスキルを含めた自身の「個性」と向き合うのが大切

編集

最後に、24年の展望を交えながら、アパレル・ファッション業界を支えるみなさんへ、メッセージをお願いします。

井出

改めて思うのは、「条件だけで選ぶ転職ってもったいない!」ということです。
想像を超える変化が次々に起こる中で、会社の状況は良くも悪くもあっという間に変わってしまいます。それは、どの企業でも同じように起こり得ます。年収や勤務体系、福利厚生といった条件ももちろん大事ですが、それだけで長い人生を楽しく過ごし、元気に働き続けるのは、思っているよりも難しいと思います。自分の人生、キャリアをどう進めたいかを、この機会にぜひ考えてみてください。その上で、転職を実りあるものにしていただきたいです。

小口

変化のスピードが速い時代だからこそ、いつどこでどんなときでも通用する「ポータブルスキル」を大事にしてください。
ポータブルスキルとは、職場や業種、職種が変わっても通用するスキルです。たとえば「論理的思考力」「コミュニケーション力」「問題解決力」「プレゼン能力」などがあり、即戦力採用でも、専門知識や技術以上にポータブルスキルを重視する企業もあるほどです。これまでの仕事を通じて身に付けたポータブルスキルは何かを考えてみてください。

加えて、そうしたポータブルスキルをさらに伸ばしていくための「学び」も大切です。リスキリング…と言うと大げさな印象を受けるかもしれませんが、小さいことからでも構いません。最近インプットが足りていないなという方は、注目の生成AIを使ってみた、気になっていた本を読んでみた、そんなところから一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?

荒木

転職をお考えのみなさん、そして企業、いずれも個性をとがらせる年になりそうだと考えています。より自分たちらしい成長を突き詰めていくと、自然と多様化していきますし、それが個性になってくる。その個性と個性がうまくマッチングすれば、きっと良い転職に繋がると思います。

年始の挨拶でも触れましたが、求人倍率は過去最高値となりました。以前であれば、「求人倍率が高い≒内定が得やすい」というシンプルな構図だったのが、最近は少し景色が変わってきています。自己内省を進め、ご自身に合った求人を見つけられる人は、きっと複数の内定を得やすいでしょう。一方で、個性と個性が合わないと、どれだけ求人があふれていても、マッチングは成立しづらいです。

マッチングの確度を上げるにはどうすれば良いか?
それは、たくさんの企業やブランドと出会うことです。

みなさんと同じように、企業の採用に関わる方々も、悩み迷いながら多くの求職者と向き合っています。そして、「会ってみないと分からない」という声を本当に多く聞きます。その言葉の裏には、多様性が進んでいることも含まれている気がします。
職務経歴書や求人票では伝わらないことを面接で伝え合い、それを繰り返すことで、個性と個性が結びつく企業と出会えるはずです。みなさんにとって、そんな道を見つける1年になることを願っています。

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