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2017.11.09

講演会「従業員が働きがいのある組織・風土づくりとは」レポート(第10回クリーデンス法人向けイベント)

2017年10月12日(木)、第10回クリーデンス法人企業様向けイベント「従業員が働きがいのある組織・風土づくりとは」が開催されました。講演会には元Google人材開発担当 ピョートル・フェリークス・グジバチ氏、株式会社アダストリア 人事部長 田中氏、株式会社ストライプインターナショナル 取締役兼CHO 人事本部長 神田氏が登壇。50名以上のみなさまにご参加をいただき、講演と参加者同士のワークショップ・交流会を行いました。今回はそのレポートをお届けします。


なぜ、いま組織開発が重要なのか

ピョートル氏(以下、ピョートル):僕はね、人事の仕事が大嫌いだったんですよ(笑)。もう少し具体的に言うと、保守的なピラミッド型の人事が嫌だったんです。トップダウンでルールを決めてその中に社員を囲ってしまう…それでは社員のパフォーマンスを最大限に発揮させることはできません。
今伸びている企業は全く逆、性善説に基づいた組織づくりをしています。コーチングやメンタリング、テクノロジーを使った社員同士のコミュニケーション手段をつくることによって、いかに社員が辞めず働きやすい環境を作れるかどうか。“心理的安全性”というコンセプトはGoogleがとても大切にしているものですが、例えばフレックスタイムで自由に働いたり、みんなで食事をしたり、時にはゲームしたり…そうした環境づくりによって、もっともエネルギーの高い状態で仕事に打ち込み、他にはないアイデアが生まれる組織となっています。
人事の仕事は管理することではなく、社員がもっとも働きやすい空間を作ること、これが今日一番お伝えしたいことです。

田中氏(以下、田中):アダストリアでもピラミッド型の人事にならないように試行錯誤しています。

神田氏(以下、神田):ストライプインターナショナルも以前はトップダウン型の組織でした。私が入社した2013年、「このままでは会社にこれ以上の成長はない。もっと社員から自由に意見が挙がる、ボトムアップ型の組織にしたい」という方針のもと、思い切って舵を切りました。


アダストリア、ストライプインターナショナルの2社では、
実際にどのような組織開発を行っているのか

グローバル展開を進めるアダストリア社が大事にするのは、Face to Faceのコミュニケーション

田中:アダストリアは現在、グローバルに存在感を高めようとマルチブランド戦略を進めています。その挑戦の過程で、社員にもスピードと変化が求められています。そんな中で会社として大事にしているのは、「Face to Faceのコミュニケーション」です。大きい規模だからこそ、直接顔を合わせてとにかく対話をするということを大事にしていて、人事としても、どうすればもっと社員同士の対話・コミュニケーションを増やせるのか、ということを日々考えています。

ピョートル:チームメンバーや部下などに対して、毎日どんなに小さなことでも変化を促すことが大切ですし、そういうことの積み重ねが関係性の構築に繋がります。関係と関係性は似ているようで違います。「関係」は、良いか悪いかという二元論ですが、関係性というのはあり方の問題。ぜひ、対話の中から関係性を大切にして欲しいですね。

ストライプインターナショナル社の社内コミュニケーションを叶えるSNSアプリ「amily(アミリー)」

神田:具体的な手段のひとつに、社内SNSアプリの「amily(アミリー)」があります。「amily」は本社・全国の店舗スタッフの誰でも利用可能なアプリで、主に「社員名簿」「社内広報プラットフォーム」「1to1メッセンジャー」といった機能があります。これによって、簡単にメッセージのやり取りをすることができ、通常店舗スタッフが店舗内あるいはエリアやブランド内でコミュニケーションが完結してしまうところを、システムを通してフラットに繋がれるようにしたのです。

ピョートル:社内SNSはいいですね。HR Techとも言われますが、テクノロジーを人事に導入していくことこそが組織を変革させる鍵です。テクノロジーの力を使って何事も「可視化」し、分析することで組織開発に活かす。この視点は人事からでしか発信できません。自発的に手を挙げて、IT部門と連携していくことを強くおすすめします。


人事として、トップとどのような関係性のもと、どのような経営サポートを行っているのか

田中:現在取り組んでいることの中には、トップ主導のものもあれば、人事から発案して提案したものもあります。例えば、社内のコミュニケーションをより良いものにするべく、トップ主導でエグゼクティブ層~部長陣のコーチングを行ったり、マルチブランド戦略に合わせて価値観やライフステージに応じた働き方を選べるマルチワークスタイルになるよう、フレックスや在宅勤務など働き方改革の具体的な施策を人事から提案したりしました。

神田:トップから言われているのは、大きな指針のみ。具体的な人事施策は基本的には我々から提案をしています。ただそれだけでなく、部署横断の選抜プロジェクトを作ってなるべく多くの人を巻き込み、皆で主体的に行えるような仕組みを整えました。

ピョートル:まだまだ変化が苦手な企業が多く、特に日本はその傾向が強いと感じています。ただ、経営者も変わらなければならないことは気付いているはずです。その声に耳を傾け、経営者のパートナーとして人事であるみなさんから積極的に関わり、一緒に組織を変えていくことが大切です。
メルカリという企業がありますね。彼らは「大胆であれ!」というコンセプトを持っていて、失敗を恐れずに大胆に仕事をしようというマインドが根付いています。もし誰かがミスをしても、それはその人が悪いのではなく、会社の仕組みが悪い。同じことが2度起きたら、それは変化のチャンスなんです。


組織開発に伴う苦労を乗り越えるための工夫とは

田中:制度の改革はまさにここ1年でトライしていることなので、現段階ではまだテスト期間で現場の反応を見ている状態です。例えば、店舗の社員ができるだけ長く働けることを目的に、店長でも大型ブランドの事業部長とお店の店長が同じ等級になることも可能な制度を設計しました。現在は制度が絵に描いた餅にならないように、実際に高い階級で活躍する店長・販売員を増やすべく、施策を検討しています。

神田:SNSによるインナーコミュニケーションの活性化については社長のバックアップもあって社内に浸透させることができました。その他、社内イベント等の企画・運営にできるだけ多くの人を巻き込むことを意識しました。当初は私自身も率先して企画・運営メンバーの一員として参加していましたが、徐々に運営メンバーも厚くなり、現在は自主的にリーダーを立てて自由に企画が立ち上がっています。


組織を変えるには何が大事で、そのために人事はどうあるべきか

田中:前職は少し極端で、明確な基準があって、そこに当てはまる人を採用し、そこに当てはまる人だけが残れば良いという考えでした。一方で現場からの不満の声も溜まっていったので、人事から経営に対して提言をしましたが、すぐには経営陣の同意は得られませんでした。そこで私は離職率や社員意識調査等のデータを集めて裏付けをとり、経営陣へ提案を重ね、最終的には同意を得られました。組織を動かすためには、トップにコミットしてもらうことが必要なんです。

神田:何より大事なのはトップのコミットメントで、当社は代表の石川が強い意志を持っていたので、われわれは人事としてブレずに手法を変えながら徹底して必要な施策を続けることができました。一方、トップの力が強い傾向にあるアパレル業界でボトムアップ型の組織を作るためには、販売スタッフの地位向上が重要だと感じています。いつか資生堂やJALのように現場出身の役員が生まれるような会社にしたいと思っています。


3人からのメッセージ

田中:現在、「会社人生をどう生きるか」ということよりも「自分の人生をどう生きるか」ということに関心が高まってきています。そんなときだからこそ、前半でもお話したFace to Faceでコミュニケーションを重ね、個人に合ったマネジメントをしていくべきだと思っています。一方で個人に合わせてばかりでもだめで、人事は経営と従業員のバランスをとらなければいけない立場なのが難しいところですね。だからこそ人事としてのビジョンをしっかり発信しなくてはいけないと思いますし、それがこれからのチャレンジです。

神田:人事は経営と現場を繋ぐ役割です。経営に対して社員の声を代弁するという耳の痛い話をしつつ、一方で経営の思いを現場に適切に伝える伝道師になることができるか。社内では「人事部はモチベーションとロイヤリティがNo.1のメンバーが集まる部でなければいけない」と伝えています。採用は会社の顔、教育は会社の代表ですから、人事が腐っては会社全体が腐る、という意識で取り組んでいきたいですね。

ピョートル:アパレルに限らずどの業界にも言えますが、自分たちの業界の傾向・動向しか見ないのは非常にもったいないことです。たとえば、Apple Storeで働いているスタッフってモノを売ってはいないでしょう?それは、Apple Storeで商品を見てオンラインで購入するという顧客体験を正しく理解し、それに合わせたサービスを行っているからなんです。あなたの企業の先にあるお客さまが何を求めているのか、常に経営者視点でビジネス的な視座をも提供できるような人事であることを心がけていきましょう。


ご参加いただいたみなさまの声

ご参加いただいた方々の97%が満足とお答えいただいた、非常に有意義なセミナーとなりました。

セミナーの感想

  • ・危機感を感じた。明日から頑張るシゲキになりました。
  • ・ゲスト3名の方のお話、とても参考になりました。早速明日から実践したいこともいくつかありました。
  • ・性善説に立ち、関係性の質を変えていきたいです。
  • ・パネラー3名のお話が貴重で、非常に勉強になりました。

現状、自社で感じている人事課題

  • ・社員同士の横のつながり、コミュニケーション
  • ・採用、育成、定着、役職登用
  • ・働きがいある会社づくり
  • ・退職率の向上、採用のスピードアップ
  • ・離職率の低下のための中堅人材育成

次回期待する内容や議題

  • ・リーダー育成について次世代育成の成功例、その最新トレンドを知りたい
  • ・評価制度や、人事制度等
  • ・ダイレクトリクルーティングの成功例 成長する組織開発
  • ・働き方改革の具体例等
  • ・タレントマネジメント、エンゲージ、HRTech、ICTを活用した改革事例

登壇者プロフィール

ピョートル・フェリークス・グジバチ氏(モティファイ株式会社 取締役)

ポーランド生まれ。2000年に来日。ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年グーグルに入社。アジアパシフィックにおけるピープルディベロップメント、2014年からグローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は独立し、モティファイ株式会社で新しい働き方と良い会社作りを支援する人事ソフトを開発・提供。
『0秒リーダーシップ』『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法』著者。

田中 良興氏(株式会社アダストリア 人事部長)

慶應義塾大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営学修士(MBA)。
?系??総合電気メーカー、外資系飲?企業、外資系?事コンサルティングファームなどを経て、2016年4月より現職。

神田 充教氏(株式会社ストライプインターナショナル 取締役兼CHO 人事本部長)

1994年東京大学法学部卒。1999年INSEAD MBA修了。
P&G、マッキンゼーなどを経て、2013年11月株式会社クロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)入社。
2014年3月取締役就任。経営企画副室長を務めた後、2015年2月より人事本部長。

クリーデンスでは、今後もこのようなセミナーや講演会を企画してまいります。
テーマや登壇者についてのリクエスト、内容についてのご意見がございましたらお気軽にご連絡くださいませ。
次回セミナーについては詳細が決まり次第ご案内させて頂きます。