アパレル企業特集

2023.02.17

douce Harmonie(株式会社エヌディシージャパン)取締役インタビュー

コロナを経て辿り着いた「健全でポジティブな組織」とは?
エヌディシージャパンの変革キーマンにインタビュー

郊外型×高感度セレクトショップ「douce Harmonie(ドゥスハルモニ)」をはじめ、自社ブランド「ENICA(エニカ)」の展開、EC、フランチャイズ、卸業と幅広く事業を手掛けているエヌディシージャパン。同社も2020年に訪れたコロナ禍では非常に苦しい思いをしたと言います。そこから得たものとは?ポストコロナ時代を生き抜くための変革とは?取締役の石井さんにお話を伺いました。

【関連記事】
「ファッションが好き!」を純粋に突き詰められる郊外型×高感度セレクトショップの魅力とは
douce Harmonie、RADICA douce harmonie(株式会社エヌディシージャパン)店長インタビュー

今回、この方にお話を伺いました!

取締役

石井 宏明さん

取締役 石井 宏明さん

香川県高松市出身。大学で上京し、イベント運営やそこから派生した派遣ビジネスなどを行い、新卒で総合人材サービスの株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。その後香川へ戻り、家業であるエヌディシージャパンでECビジネスの拡張やフランチャイズ事業の立ち上げ、各種社内制度の整備などを手掛ける。現在は取締役として経営全般に携わっている。

全国各地のショッピングセンターを中心に展開するセレクトショップ
「douce Harmonie(ドゥスハルモニ)」

エヌディシージャパンはもともと香川県・高松で路面店からスタートしたセレクトショップです。
ショッピングセンターを中心に2023年1月時点で8店舗展開しているdouce Harmonie(ドゥスハルモニ)、レディースセレクトのフラッグシップショップとして高松に路面店を構えるRADICA douce harmonie(ラディカ ドゥスハルモニ)、同じく高松に店舗を構えるGRAPES(グレイプス)、加えてアウトレット店舗とECサイトを展開しています。

そのほか、フランチャイズのご縁もあり、現在はアズールバイマウジーを4店舗、ほか、高松でマーガレットハウエル、ポール・スミスの路面店を運営しています。

トレンドからベーシックまで国内外のブランドを数多く取り扱い、東京をはじめ都心部では当たり前のように手に取ることができる高感度ブランドを、地方都市のショッピングセンターで気軽に楽しめるのが魅力です。3世代にわたってお越しいただくお客さまもいらっしゃるほど、幅広い年齢層のお客さまに足を運んでいただいています。


アパレル業界全体が大きな打撃を受けたコロナ禍
その逆境こそがチャンスだと感じた

コロナ前の数年は、ショッピングセンターで展開するドゥスハルモニの整備を進めていました。たとえばVMDのパッケージ化やバイイングの一本化などです。
数年かけてある程度の整理ができ、業績も安定化してきたところでやってきたのがコロナ禍でした。ようやくこれからというタイミングで本当に厳しかったですが、今思えば、その整備ができていなかったらもっと危なかったかもしれません。

補助金などによって社員を守ることはできましたが、この先どうしていこうかと周囲を見回したときに、状況としては都心部で戦う大手アパレル・セレクトショップよりも地方都市のほうが落ち込みは小さく、回復のタイミングも少し早かったということに気付きました。
厳しいながらも当社はまだ動ける!と前向きに捉え、まずは経費を細かく見直して出費を抑えることに成功しました。その分、いち早く次の一手を打つために経験豊富なMDを採用し、自社ブランドのアップデートに取り掛かりました。

そうやってどんどん意思決定して動いていくと、少しずつ、コロナ前よりも良い成果が見え始めました。

マンガ・アニメの「ドラゴンボール」をご存じの方は、サイヤ人を思い浮かべてみてください(笑)。サイヤ人という戦闘民族は、死の淵から復活すると、元よりもさらに強くなるという性質を持っています。一度倒れて、体力を回復させる「仙豆」を食べたらパワーアップしてさらに強くなっている。僕たちもそうなれるんじゃないかという手ごたえを感じ始めたんです。

誰しも、自らピンチに飛び込みたいとは思いませんよね。しかしそういう体験をしたほうが、本来持っているパワーがちゃんと発揮されることを私たちはコロナ禍で再認識しました。

そんな話をすると、精神論、感情論のように感じられるかもしれませんが、それは違います。
現状維持のリスクと攻めるリスクを比較したとき、どちらのリスクが高いかというと、現状維持のリスクの方が高い。なぜなら現状維持している間に周りが成長してくことにより、相対的には後退してしまうからです。

僕たちはリスクの高い現状維持ではなく、常に攻めの姿勢でいきたいと強く思いました。


現在20億円の売り上げを50億円まで成長させていくため、
事業の柱を複数作り上げる

僕たちはこの先、エヌディシージャパンを50億円規模の企業にしたいと考えています。 どうやって実現するかというと、分かりやすく言えば10億円の事業を5本成功させるイメージ。大きな太い柱が1本しかないと機動力が落ちてしまい、今回のコロナ禍のような大きな変化に対応しにくくなるため、中規模の柱を複数立てることで目指していきます。

メインはやはりドゥスハルモニです。現在8店舗ですが、2023年には2店舗出店を予定しており、3年後には17~18店舗程度まで拡大しようと計画しています。出店期と並行して、自社ブランド「ENICA(エニカ)」を育て、そちらもゆくゆくは出店していきたいです。加えて今強化しているのが、卸ビジネスです。実は大手セレクトショップはほとんど手掛けていないこの領域を、当社ならではの強みにしていきたいと考えています。


「攻めの3年」にしていくために重要なのは、それらを動かす「人」に対する投資

このように「攻め」のプランは着々と進んでいるのですが、一方でその攻めを担う「人」の部分に多くの課題があります。そのうちのひとつが評価制度・賃金制度で、いち早くアップデートしていきたいと考えていますが、その前に会社として改めて打ち出さなければならないのが、会社の“ミッション” “ビジョン” “バリュー” の3つです。

ミッションとは、エヌディシージャパンが社会全体に対して「果たすべき使命」「存在意義」。
ビジョンとは、エヌディシージャパンが目指す「あるべき姿」。
バリューとは、ビジョンやミッションに近づくために社員が「やるべきこと」。

評価制度を変えるためには、まず会社の使命、あるべき姿、そのためにやるべきこと、この3つを明確化して会社全体に浸透させなければなりません。なぜなら各自が評価のために設定するKPI目標は、この3つに基づいている必要があるためです。会社が向かう道筋と個人の目標がリンクしてこそ、はじめて本人も会社も健全に成長していくのです。

そうした考えに基づき、3月には数年ぶりに全国の全店長が本社に集まってエヌディシージャパンの未来について意見を交わし合う「ビジョン会議」という会を行う予定です。
経営陣だけでなく、店長全員が一堂に会して自らの思いを発信する。それによって会社の仕組みや制度がアップデートしていく。それを繰り返していくことで、自分たちの声と行動で会社を変えていけるというモチベーションに繋がることを目指しています。


コロナ禍で改めて実感した、コミュニケーションの重要性

2022年の年末、僕は全店舗を回って全社員と1対1の面談をしました。
そこで強く感じたのは、コロナ禍をきっかけにコミュニケーションが減ってしまっているということでした。オンライン会議は手軽で便利ですが、それだけでは必要最低限のやりとりしか生まれません。本当の意味でお互いを理解し合って信頼関係を構築するには、会議以外のコミュニケーションや雑談、食事などの時間だったりもするんです。

面談の中である店長から出た話です。
上司にあたるマネージャーは遠方におり、電話やオンラインでは話をするものの、直接会ったことがなかったこともあって、気軽に相談できる関係性ではなかったそうなのです。不安なことや分からないことをうまく相談できないまましばらく経ったある日、マネージャーの出張でついに直接会うことができ、あっという間に仲良くなって、夜も飲みに行って、そこから色んな相談を気軽にできるようになった!と話してくれました。

これからの時代、コロナに限らず何が起きてどうなるかも分からない中で、会社からのトップダウンで細かいところまで指示を出し続けていくよりも、自分たちで考えて動いて相談し合って解決していく方が早くて効率的なことがたくさんあります。会社としては、そのための仕組みや環境を用意したいし、コミュニケーションの機会をもっと作っていきたいと考えています。

基本的なことかもしれませんが、そこから強い組織ができあがってくるのだと思います。
このこと自体、積極的にコミュニケーションを取りに行ったことで気付けたことです。


販売職におけるキャリアの可能性は
「店長」や「エリアマネージャー」だけではない

これまでは販売職のキャリアアップといえば、「店長」や「エリアマネージャー」を目指すというシンプルな一本道でしたが、今後はさまざまなキャリアを目指せるようにしたいと考えています。
大きくは2つあります。

ひとつは事業間異動です。先ほど、ドゥスハルモニとエニカの店舗展開についてお話しましたが、商品の価格帯やお客さまの年齢層がやや異なるため、年齢や経験を重ねる中でショップを超えた異動ができるような環境を整えていきたいです。

もうひとつは、価値発揮できるポジションを創り出していくことです。たとえば接客のプロとしてスキルを磨き続け、売上を創出することで価値貢献したい方は、マネジメントではなくプロフェッショナルな道を歩んでいく。若手社員の育成にやりがいを感じる方は、全店舗の質を底上げする仕事を担っていく。
価値を生み出す仕事はそれだけでひとつのポジションになり得ますし、そうやって柔軟に考えた方が社員も会社もお互いがwin-winな関係性になります。

具体的な仕組み化はこれからですが、コンパクトな組織なので意思決定はとても早く、スピーディーに実現していきたいです。


新しくジョインしてくださる方には、シンプルに「力を貸してほしい」という思い

今日お話しした内容はほんの一部ですが、僕たちにはまだまだたくさんの課題があります。それはつまり、それらの課題を改善すればまだまだ成長の余地があるということで、僕としてはすごくワクワクしています。

ただ、その課題を改善していくためには人が足りません。
人が足りないと物事を仕組み化し、運用することは難しいですし、なにより疲弊していきます。
疲弊した状態で新しいことを始めようとしても、気持ちが付いていきません。
今回の採用強化はそうした背景で行っています。

そのため、エヌディシージャパンに興味を持ってくださった方には、「力を貸してください」という気持ちでいます。
強みは人それぞれ違うものですから、お互いが強みを活かし、弱みを補完し合っている組織がベストです。なので、僕たちから「こういう強みを持った人」と限定することはありません。
面接では、エヌディシージャパンが目指すことに対して、どんな点がフィットするか?どんな形で強みを発揮いただけそうか?ということを一緒に話し合いたいです。そうやって生まれた関係性は、とてもフラットで健全だと思うんです。


そこにある問題や課題をポジティブに捉えられること

どんなスキルや強みを持っていたとしても、共通して求めているのは、ポジティブな人です。

たとえば2020年にコロナで大変なことになりました。外出が制限されました。
このときに、「外に行けない、お店も開けられない、人にも会えない、ずっと家で待機しているのは嫌だなあ」という捉え方もできれば、「仕方がないから家で見たかった動画をたくさん見よう、本を読もう、ドライブを楽しもう、人の少ない山奥に行ってみようかな」という捉え方もできますよね。この後者の捉え方をできる人が、これからの時代を生き抜く上でとても重要です。

今ある問題が何かを捉え、それに対する解決策を出して、「もっと良くなるはず!」とポジティブに捉えることができれば、特別なスキルがなくても、多くのことを実現できると思います。
今回の採用でそんな方々と出会い、一緒にエヌディシージャパンを盛り上げていけると嬉しいですね。

douce Harmonie(株式会社エヌディシージャパン)

douce Harmonie(株式会社エヌディシージャパン)

事業内容 アパレル卸売·小売·製作·企画
(婦人服、紳士服、シューズ、アクセサリー)
事業所 香川県高松市番町1-6-6甲南アセット番町ビル307
設立 1988年
代表者 代表取締役社長 石井 浩一
従業員数 129名 ※うちアルバイト49名(2023年1月時点)
資本金 1,000万円

アパレル企業特集 最新記事

アパレル企業特集一覧