アパレル企業特集

2022.05.09

On(オン・ジャパン株式会社)

オン・ジャパンコミュニティの聖地をつくる
旗艦店スタッフが体現するOnのスピリットとは?

スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2kmの合計距離約226kmで行われるアイアンマンレース。そのチャンピオンだったオリヴィエ・ベルンハルドが、理想のシューズを追い求めて2010年に設立したのがOnです。設立から11年でNY証券取引所に上場し、2022年4月には東京・原宿にNYに次ぐ2店目の旗艦店をオープンさせました。
今回はジャパンの代表である駒田さんと、旗艦店店長の松尾さん、オープニングスタッフの高橋さんに、仕事内容やオン・ジャパンで大切にされている価値観、そしてオン・ジャパンを語る上で欠かせないOnFriends(オンフレンズ)コミュニティについて、お話を伺いました。

もくじ

今回、この方にお話を伺いました!

オン・ジャパン代表

駒田 博紀さん

オン・ジャパン代表 駒田 博紀さん

商社勤務時代に、Onの日本市場におけるセールスおよびマーケティングを担当。2015年にオン・ジャパンを設立し、代表に就任。

On Tokyo Store Lead(店長)

松尾 僚介さん

On Tokyo Associate Store Lead(副店長) 松尾 僚介さん

前職はスイス系の会社でカバン類の販売や店舗立ち上げを担当。その後2021年にオン・ジャパンに転職し、フラッグシップストア立ち上げのプロジェクトに参画。

On Tokyo Lead Store Advisor

高橋 奈々さん

On Tokyo Lead Store Advisor 高橋 奈々さん

2019年1月にオン・ジャパン入社。販売店のサポートを行うテックレップの仕事を経て、2022年3月からフラッグシップストアのチームに参画。

テクノロジーとサステナビリティを追求し、お客さまからの支持を得る

まずはオン・ジャパンについて教えてください。

駒田:オン・ジャパンは、スイスのチューリッヒで生まれたブランド「On」の日本法人です。
アイアンマンレースのヨーロッパチャンピオンだったオリヴィエ・ベルンハルドが、足の痛みを感じずに長く走れるシューズを自分用に作ったのが、On創業のきっかけです。オリヴィエが周りの友達に試作品を履かせてみたところ、軽くて履きやすく、何より走っていて楽しいと好評だったため、友人2人と貯金を出し合いブランドを立ち上げました。
創業当初はシューズのみの販売でしたが、現在では、アパレルやアクセサリーも幅広く取り扱うトータルスポーツブランド・ライフスタイルブランドとして、成長を続けています。

Onは、”Ignite the human spirits through movement”、日本語にすると「行動を通じて人の魂に火を灯す」をブランドミッションに掲げています。ここでのスピリット、魂とは、”Explorer Spirit(未知への勇気)”、”Athlete Spirit(より良い自分を目指す)”、”Team Spirit(チームワーク)”、”Survivor Spirit(地球を守る)”、”Positive Spirit(前向きな影響)”の5つで、これらは私たちがとても大切にしているコアバリューです。

Onのコアバリュー「The Human Spirits」は、Onというブランドがこの世に存在する理由、達成したい目的であるという。

Onは2021年にNY証券取引所に上場、また2022年4月にニューヨークに続く2店目の旗艦店を原宿にオープンし、とても勢いを感じます。どんなところが人気のポイントなのでしょうか?

駒田:特徴の一つとして、テクノロジーがあります。でこぼこした独特な形状のソールには「CloudTec™」と呼ばれる技術が使われており、着地した時にはフワッと、前に進む時にはポンッと弾くような感覚を得られます。私たちは「雲の上の走り」と表現していますが、この今までに無かった着用感や面白さが評価されています。
もう一つはデザインです。商品はもちろん、店舗の内装も、スイスらしい、シンプルさと上質さの両立を大事にしながら作り上げています。

また、Onは環境への取り組みも積極的に行なっています。
Onのスイス本社には、サステナビリティ専門のチームがあります。シューズ製造における再生素材の使用率は年々上がっており、ゆくゆくは全てのシューズを100%再生素材で製造したいと考えています。販売したシューズを回収し、それを原料にして新しいシューズを作るサイクルも、今後実現させる予定です。

Onがサステナビリティに積極的に取り組む理由は、私たちは「自然の中で遊ばせていただいている立場」であると考えているからです。自分たちが今楽しんでいる環境を次の世代に伝えることは、当然の義務だと考えます。こうしたサステナビリティに対する考え方に共感いただいているお客さまも多いと思います。

「CloudTec™」と呼ばれる技術であしらわれた独特な形状のソール。これがOnの最大の特徴である。

Onの楽しさを感じてもらうことが仕事

お店での具体的な業務について教えてください。

松尾:お店に足を運んでくださったお客さまに、私たちのOnというブランドがどういうものなのか、何を目指しているのか、商品にどんな特徴があるのかをお伝えすることが主な仕事です。

お客さまにブランドを伝える上で、重視されていることはどんなことでしょうか?

松尾:Onのアジア圏初の旗艦店スタッフとして、ブランドや商品の精神的な部分をお伝えし、体現することです。商品を売ることそのものにフォーカスするよりも、Onのブランドをお伝えできるかどうかの方が重要とすら思っています。私たちの仕事は、一般的には「販売員」と括られますが、どちらかと言えばブランドアンバサダーに近い役割だと思います。

高橋:私も、仕事をする上で自分たちのことを販売員であるとはあまり思っていません。このお店にいるのはOnを語る人たちです。お客さまにOnを履いてほしい気持ちはもちろんありますが、商品の販売はあくまで結果であり、それよりもOnの楽しさを感じてもらうことが私たちの役割だと思っています。

ショップは「体験型」の仕掛けが多数。2Fの天井にはカメラが設置してあり、その下を走ることで適したシューズの提案を受けることができる。

接客上のポイントなどはあるのでしょうか?

松尾:実は、オン・ジャパンの接客にはマニュアルのようなものは一切ありません。これからジョインされる方は不安に思われるかもしれませんが、それも承知の上で、あえてそうしています。

オン・ジャパンには、個性豊かなスタッフが集まっています。それぞれがOnの楽しさを語れるスキルを持ち、誠意を持ってお客さまに対応すれば、それが結果的に心地よい接客になると思っています。

スタッフの皆には「ここを自分の家だと思ってください」とよく話しています。自分の家ならば、ゴミが落ちていれば拾い、お客さまが来る時に散らかった状態で迎え入れるわけにはいかない、と考えると思います。
お客さまを迎える際の言葉や、会話の内容についても同様です。お客さまが困っていたら助けてあげることは自然なことです。そのような認識を共有していることが、私たちにとってより重要だと考えています。

駒田:Onには、細々としたルールがありません。私たちのコアバリューに即して自分で考え、正しいと信じる行動をすることを大切にしています。もちろん、Onのスピリットの解釈に齟齬が生まれることはありますが、その際は話し合って解決するようにしています。

接客に対する考え方は、私たちがこれまでお客さまとどのような関係性を築いてきたか、そしてこれからお客さまとどのようにお付き合いしていきたいか、という考えが反映されています。
Onの独特なテクノロジーや、軽くて格好いいといった特徴は、それだけでお客さまに伝わるものではありません。実際、シューズのマーケットには世界的なブランドがひしめいていますので、商品だけで判断すれば、どのブランドも優れています。
優れた商品に何を加えればお客さまの心に響くブランドになれるのか。それは、人と人とのつながりのような「精神的なもの」だと思うのです。

お客様の心を響かせる最大のポイントは、Onのアンバサダーとして、心からの言葉で伝えることであるという。

OnFriendsは、お客さまだけれども友達のような関係性

お客さまの心に響くブランドになるための「精神的なもの」について教えてください。

駒田:Onには「OnFriends」というオン・ジャパン発のコミュニティがあります。SNSのハッシュタグで検索すると4万7千を超える投稿があり、日本各地にOnを楽しんでいる人たちがいることが分かります。

話はさかのぼりますが、OnFriendsは元々、私がOnを日本に広めようと、Onに興味を持ってくれた方と地道にSNSでつながっていったことがきっかけでした。2013年ごろの話です。 つながった方々に向けて、私はOnを履いて走る様子を日々発信しました。今日は5km走りました、10km走ったら苦しかった、Onの創業者のオリヴィエがやっているトライアスロンに興味が出てきたのでやってみようか、といった具合です。

すると、お客さまから次第にコメントが来るようになりました。「応援しています!」とか「トライアスロンやってみてください」とか言われて。それでトライアスロンを完走したら、「駒田さんよくやった!」「次は、オリヴィエがやっていたアイアンマンですよ」なんて送られてくるんです。

アイアンマンは、3.8km泳いで、180km自転車に乗って、最後にフルマラソンをする、超人がやるようなレースです。私はOnに関わるまで走ったことの無い人間でしたから、途方もない挑戦でした。でもお客さまは盛り上がっているし、Onのルーツであるスポーツでもあるので、挑戦することにしました。そして、実際に完走することができたんです。 完走の瞬間はすごかったです。「駒ちゃんよくやった!」って言ってもらって、私も「やったよ!応援ありがとう!」って返して。敬語も次第に無くなって、お客さまだけれども友達のような関係性ができていったんです。

Onをきっかけに、お客さまの枠を超えたコミュニティが広がっていったという代表の駒田氏。まさにOnのミッションを体現している。

お客さまが、駒田さんの応援団になっていったんですね。

駒田:自分の挑戦を発信するうちに、OnFriendsが「駒田さんのおかげで私も何かに挑戦したい気持ちになりました」と言ってくれたり、フルマラソンに挑戦する方が出てきたり、自己ベストを更新しようと新たなチャレンジをする方が出てきたりしました。

そうやってOnFriendsたちが日々の生活で前向きに行動し、それをSNSで発信しつながっていく。さらに、それを見て楽しそうだと思ってコミュニティに集まって来る人たちがいる。そういったところにOnが広がった精神的な側面が表れているのだと思います。

駒田さんの挑戦が、OnFriendsの皆さんの挑戦を誘発したというわけですね。

駒田:今思うと、Onのミッションである「行動を通じて人の魂に火を灯す」ことを、知らず知らずのうちに体現できていたのかもしれません。
今では、社員もそれぞれにミッションを体現するような行動をし、それを発信してくれていて、OnFriendsに「何かこの人たち前向きに楽しんでいるぞ」と思ってもらえていることを感じます。

駒田さん以外のオン・ジャパンの皆さんにとって、OnFriendsはどのような存在ですか?

松尾:私もお客さまの枠を超えた関係性を感じています。初めはOnFriendsの存在を駒田から聞いていただけでしたが、実際にOnFriendsの方にお会いしてお話しすると、やはり店員とお客さまの関係ではなく、Onが好きな人同士という立場でいられるのが印象的でした。

高橋:私も同じで、いい意味でお客さまだと思ったことがありません。OnFriendsの皆さんから、ナナさんこんにちは!と挨拶していただきますし、以前私が販売支援としてお店に立ったときには、駒田がそのことをブログに書いたことで毎日のようにOnFriendsの方が来店してくれました。私がレースに出るときには「がんばれ!」って鼓舞してくれますし、逆に私がOnFriendsの応援に行くこともあります。
私は元々OnFriendsの一人としてOnを好きになったのですが、こんなにアットホームでフレンドリーなんだというのは、オン・ジャパンに入って改めて感じたことです。

OnFriendsの一人から、スタッフとしてジョインした高橋さん。お客さまとは良い意味で友人のような関係性だという。

旗艦店をOnFriendsの聖地のような場所に

オン・ジャパンの今後の展望について教えてください。

駒田:日本中の各都市にOnFriendsのコミュニティを作り、それをつなげていきたいと思っています。そして、「Onと一緒に生活すると、いつの間にか人のつながりが生まれて、毎日が楽しくなってくる」「日本中のOnFriendsとつながって、いつでもどこでも一緒に走れたり、旅が楽しくなったり、ハリのある生活が送れたりする」、そう思ってもらえるブランドにしていきたいです。

この旗艦店を全国に広がるOnFriendsのホームにしたいと思いますし、全国のOnFriendsにいつか必ずここに来たいと思ってもらえる、聖地のような存在にしていきたいとも考えています。 だからこのお店で働くスタッフは、OnFriendsコミュニティを喜んで迎える、ブランドの精神を体現するような存在でいてほしいし、そうなるようにサポートしていくのも私の役割です。

今後採用を進めていく中で、どんな方に来てもらいたいかを教えてください。

松尾:ランニングやスポーツに限らず、何かのことが真剣に好きな方ですね。その上で、なぜ好きか、どんなところが好きか、ということを人にストーリーとして語れる方に来ていただきたいと思います。

駒田:ストーリーってとても大切です。情報が氾濫している世の中で、ストーリーの無い情報を発信しても、誰にも響きません。でも、自分が好きなものを自分の言葉でストーリーにできたら、たとえ情報は残らなくても、そのストーリーは相手の心に残ります。
日本でOnに関わってからこれまでの9年間は、ストーリーを発信し続けることで、OnFriendsがつながっていった軌跡でもあります。なので、これからオン・ジャパンに入ってくる方にも、ストーリーを語り続けてほしいと思っています。

最後に、オン・ジャパンに興味を持たれた方へのメッセージをお願いします。

高橋:自分も楽しみながら、お客さんと楽しみたい、そういう方と一緒に働きたいと思います。

松尾:もし近くにいらっしゃることがあれば、お店に足を運んでいただけたらと思います。店内でOnのテクノロジーを体験し、靴を履き、私たちと話をするうちに、この場所が単に商品を購入するだけの空間ではないことに気付いていただけると思います。そして、私たちと一緒にここで働きたいと思ってもらえたらと思います。

駒田:人は誰しも、仕事を通じて誰かを少しでも助けたい、幸せになってもらいたいという想いを持っていると私は思います。そのために、まずは自分の幸せや楽しさを精一杯求めてほしいです。それが、ひいては同僚やお客さんを楽しくすることにつながっていきますし、そんな方と出会いたいと思います。

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On(オン・ジャパン株式会社)

On(オン・ジャパン株式会社)

事業内容 運動靴・スポーツウェア・スポーツ関連の
輸入、輸出、販売及びマーケティング
事業所 本社:神奈川県横浜市中区山下町30-1 パークコート山下公園203
設立 2015年4月
代表者 代表取締役 キャスパー・コペッティ
従業員数 従業員数 60名(2023年6月現在)
資本金 5,400万円

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