アパレル企業特集

2020.08.05

HONMA(株式会社本間ゴルフ)

60年の歴史と変革の両立で急成長を遂げた本間ゴルフ
アパレル事業をきっかけにさらなる成長を目指す

1959年の創業以来、メイドインジャパンにこだわったゴルフメーカーとして、60年以上の歴史を紡いできた本間ゴルフ。2016年からはアパレル事業「HONMA APPAREL(ホンマアパレル)」をスタート。その他アクセサリー用品やゴルフボールなどの事業も好調で、2019 年の決算報告書では売上⾼+7.86%、純利益+16.62%と驚異的な成⻑を見せています。
そこで今回は、取締役副社長の菱沼 信之さんにインタビュー。本間ゴルフとはどのような企業か?成長の理由は?これから目指す姿は?さまざまな話を伺いました。

今回、この方にお話を伺いました!

取締役副社長

菱沼 信之さん

取締役副社長 菱沼 信之さん

米コンサルティングファーム、テーラーメイドゴルフ(アメリカ本社/日本法人)を経て、2017年、本間ゴルフに転職。常務執行役員としてマーケティングとハードグッズ(ゴルフクラブ)営業を統括する。2018年よりマーケティング統括を継続しつつ、取締役副社長に就任し、現在に至る。

好調の本間ゴルフがさらなる成長のためにスタートした
アパレル事業「HONMA APPAREL(ホンマアパレル)」

菱沼さんは前職、同業界のテーラーメイドゴルフ社にいらっしゃいました。競合である本間ゴルフに転職した理由は何だったのでしょうか?

一番大きな理由は、日本のブランドだということです。
ゴルフ業界において本間ゴルフは品質・性能の面で非常に評価が高く、ものづくりにこだわるブランドとして、当時からとても注目していました。僕はそれまでずっと外資企業だったのですが、日本の文化やモノ、サービスなどを世界に向けて発信してビジネスを成長させる本間ゴルフが魅力的に映り、日本人としてチャレンジしてみたい、とここに辿り着きました。

本間ゴルフへの印象で入社後に変わったところ、変わらないところはどういったところでしょうか?

変わらなかったのはものづくりへのこだわりです。精度、性能、熱意…むしろ想像以上でした!
印象と違ったところ、というよりも、前職までとのギャップという点で言えば、スピード感です。ものづくりにこだわる企業として、じっくり時間を掛けて考えることは日本企業らしい良さであると同時に、ビジネスを成長させる上で、スピード感は非常に大切な要素です。しっかり時間を掛ける部分とスピーディーに判断する部分をうまく見極めることで、組織はもっと良くなると感じました。

改めて、本間ゴルフについてご紹介いただけますでしょうか。

本間ゴルフはゴルフクラブの製造からスタートしたメーカーです。3年前から本格的にアパレル事業「HONMA APPAREL(ホンマアパレル)」を立ち上げ、さらにアクセサリー類、ボールなどの製造・販売にも力を入れて取り組んでいます。
新規事業については新参者なので、まだまだ課題もたくさんありますが、その反面、チャレンジングなところがたくさんあります。本間ゴルフは、ありがたいことに高品質ブランドとしての認知をすでに獲得しているため、そこをアパレルなどゴルフクラブ以外のアイテムにも連動させていきたいと考えています。

50年以上ゴルフクラブ一筋だった中、近年、アパレルやアクセサリー用品を強化するに至った理由は何だったのでしょうか?

ゴルフアイテム市場は、クラブと、アパレル・アクササリー用品の割合が約半々と言われています。ゴルフクラブだけで勝負すると、どうしても市場の半分でしか戦えません。ゴルフ人口の高齢化など、さまざまな変化の中で事業を成長させるためには、アパレル・アクセサリーの領域への拡大は必然でした。
現在の売上比率はゴルフクラブ80%、アパレル・アクセサリー用品20%と偏りがあるため、アパレル・アクセサリー用品の割合を上げていくべく強化をしています。

ゴルフクラブは長い歴史の中で培われたイメージや価格面などから、なかなか気軽には手が出ないかもしれません。しかし、アパレルやアクセサリー用品は新しく立ち上げたところなので、気軽にホンマブランドに触れる機会になればと考えています。直営店も、ゴルフクラブだけがずらりと並んでいたころと比べて、ゴルフウェアやアクセサリー用品も併せて並ぶことで雰囲気がぐっと柔らかくなり、気軽に足を運んでいただきやすくなったと思います。

たしかに、気軽にホンマブランドに触れるきっかけがあると入りやすいですよね。

ホンマ=高品質というイメージが植え付けられているので、お客さまと接する際に、モノが良いことを改めて強くアピールする必要がないのは大きなアドバンテージだと感じています。品質・性能が良いことを前提に、手に取りやすい価格帯の商品を揃えることで、ホンマブランドのイメージを良い意味で変え、多くのお客さまに楽しんでいただけるブランドにしていきたいですね。


本間ゴルフが培ってきた伝統の部分は保ちながらも、
新しいチャレンジを重ねることで新しいファンを醸成する

2006年の民事再生から一変、直近では右肩上がりに急成長しています。どのような変革を遂げたのでしょうか。

経営破綻後は投資会社が入り、立て直しを行いました。2010年からは現会長である劉 建国(りゅう けんこく)氏が入り、密にコミュニケーションを取りながらアグレッシブにビジネスの見直しを行ってきました。

その際、劉会長は、「良いものはずっと昔から作っている。品質、性能はまったく問題ない」と本間ブランドに太鼓判を押したうえで、「その売り方やアピールの仕方を変えていかなければならない」と変革ビジョンを定めました。
積極的にマーケティングに投資し、プロゴルファーとの契約を一気に増やして露出拡大していった結果、それまで根強く残っていた「知る人ぞ知るおじさんゴルファーのブランド」からの脱却をはかり、「ゴルフ上達のために真摯に向き合っている人」にもリーチすることができました。

劉会長の、「本間はゴルフ界のエルメスだ」「マーケティングはルイ・ヴィトンに学ばなければならない」という言葉を拝見しました。

まさにマーケティングを変革しなければならないという言葉ですね。
われわれが今チャレンジしている、“新しいホンマブランド” をどのようにマーケットに届けるか。つまりブランドコミュニケーションの手段については、どんどん新しいものを取り入れていきたいと考えています。
たとえば2019年9月には、AIによって生成された架空の“実在しないモデル”たちが「HONMA APPAREL」2019年秋冬コレクションのコーディネートを着こなす「Who am AI?」プロジェクトを発表し、ゴルフ業界だけでなく、広く注目を集めました。これは、ほぼ無限に生成される架空モデルのコーディネートによって、自分に似合う一着を見つけて欲しいという思いが込められています。

当時、WWDなどのファッションメディアや駅広告など多数の露出を目にしました。気になってご覧になった方も多かったのではないかと思います。

モノは良いので、広くユーザーとのタッチポイントを増やし、一度手に取ってもらえれば気に入っていただけるだろうという自信はありました。これまで本間ゴルフが培ってきた伝統の部分は保ちながらも、新しいチャレンジを重ねることで新規ファンを拡大し、ロイヤルカスタマーになれば売上に繋がります。また、ロイヤルカスタマーの満足度が高いほど、新しい方にすすめていただけます。そのサイクルを作るためのアクセルを踏めたことが、急成長の大きな理由だと捉えています。

良いスタートが切れたことで、2016年10月には香港に上場することができました。それによりアジア圏だけでなく欧米を含むグローバル戦略の強化、カテゴリーの拡大などを現在進めることができています。


妥協することないものづくりへのこだわりこそが、ホンマブランドの本質

本間ゴルフならではの、競合優位性はどういう点でしょうか?

30店舗の直営店と、山形県・酒田に自社工場を持っていることです。インフラを持っていることは、圧倒的な差別ポイントだと捉えています。

まず直営店ですが、実は多くのゴルフメーカーは直営店を持っておらず、卸売ビジネスで成り立っています。それに対し、本間ゴルフは直営店ビジネスを柱に、卸売の拡大を進めています。直営店の良い点は、足を運んでくださったお客さまと直接コミュニケーションが取れること。本間ブランドのアピールもしやすいですし、直接ご意見をいただけることで、商品やサービスの品質向上に繋げられる点も非常に有利です。アパレル業界では当たり前の直営店も、ゴルフ業界では貴重な存在なんです。

もう一つの酒田の自社工場、これはゴルフクラブの製造工場です。ゴルフクラブはほぼ輸入品なので、一定規模以上で国内工場を持っているのは当社以外にありません。 品質はもちろん、修理などのアフターサービスに至るまで、妥協することないものづくりへのこだわりこそが、ホンマブランドの本質。それは、国内工場を持ち、熟練の職人が1本1本、商品と向き合い続けていることによって成り立っています。“メイド イン 酒田、ジャパン”という安心感は、性能以上の付加価値として、本間ゴルフの強みとなっています。

妥協することないものづくりへのこだわり…本間ブランドの自信と強みが伝わってきます。逆に、今課題に感じていることはどういった点でしょうか?

現状はゴルフクラブの売上比率の方が大きいため、事業の売り上げ構成比をカテゴリーごとに最適化し、企業の体力を付けていかなければなりません。

それを実現するためには、相応の専門知識、経験を持った人材が必要です。強みであるゴルフクラブのものづくりと直営店に加えて、卸売、アパレルのものづくりや売り方、組織変革のための人事やファイナンス、社内インフラ、業務改善プロセス、グローバルの事業戦略などなど、各方面の強化が不可欠です。
扱うアイテムが増え、ビジネスが多様化しており、加えてグローバル化も進めている状況に対し、組織がまだ追い付いていないので、成長のために必要なプロフェッショナル人材の確保が大きな課題ですね。

アパレル商材のものづくりは、アパレル業界出身のプロフェッショナルがいらっしゃるのでしょうか?

はい。アパレル企画開発を担当しているのはスポーツアパレルの出身者です。アパレル事業の強化に欠かせない知識や経験を発揮し、当社に今までなかったノウハウが蓄積されています。現在、アパレル事業における伊藤忠商事との戦略的業務提携を締結しているのですが、われわれに素材や繊維のノウハウがないと、せっかくの業務提携も活かせなかったでしょう。良い体制が整ってきていると感じています。

また、アパレルビジネスと連動して、ECサイトも強化ポイントです。ゴルフクラブは試してみたりフィッティングしたりが必要ですが、アパレルは一度サイズが分かればあとはデザインで選べますし、アクセサリー用品やボールはECサイトから気軽に買えると便利ですよね。
もちろん直営店も変わらず強化ポイントです。アパレルやアクセサリー用品が増えたことによって、新しいお客さまに向けた商品の並べ方、見せ方、接客の仕方などをどんどんアップデートしていますし、今後もっと良くしていけると思っています。


常に市場に向き合ってビジネスをすること
当たり前のことを継続することで色んな環境にも対応できる

菱沼さんが描く、本間ブランドの未来をお聞かせください。

ゴルフにまつわる幅広いアイテムとサービスをご提案し、さまざまな形でゴルフに貢献できるブランドを目指しています。

少子高齢化の影響もあり、ゴルフ業界のマーケットは決して活発な業界であるとは言えません。コロナ禍も含め、この先もさまざまなことが起こり得るとも思います。20年先、30年先はもしかすると今の形のままではないかもしれませんが、ゴルフが無くならない以上、ホンマは必ず残っているブランドだと思っています。

なぜかと言うと、われわれが “ゴルファー” という市場にちゃんと向き合ってビジネスをしているからです。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、そういう当たり前のことを継続していくことでブランドは強くなっていきますし、色んな環境にも対応できる、一番本質的なものだと僕は思っています。

最後に、職種問わずこれからの本間ゴルフの成長にフィットする方は、どういう方だとお考えですか?こんな人と一緒に働きたい、というメッセージをお願いします。

本間ゴルフは歴史ある企業でありながら、新しいチャレンジを積極的に行うマインドを持ち合わせています。だからこそ立ち直れたとも言えます。ですので、良い意味で恐れず、チャレンジ精神を持った方は、きっとご活躍いただけると思います。

特にアパレルのようなトレンド性の高い商材は、他のゴルフアイテムと比べると抽象的で、絶対的な正解はないものだと感じています。あまりロジカルに計算高く進めるタイプの方よりは、逆に「これが今シーズンの正解です」といって実際に正解まで持っていける方、自分で成果を引っ張ってきて正解にしてしまえるような方、そういうマインドの方を求めています。

あとは基本的なところですが、コミュニケーションですね。正直に向き合っていろいろと話ができる、思っていることを一生懸命に伝えられる、そういう人たちが集まれば、誰かが失敗してもリカバリーしやすいですし、成功したときにはみんなで喜んで、さらに伸ばしていくことができますから。

気になるCheck!! ゴルフが好きじゃないと働けない?

ゴルフメーカーで働くとなると、やはりゴルフの経験がないと難しいでしょうか?

昔はゴルフ好きの社員しかいなかったと聞きますが、今はそんなことはなく、色んな価値観をもって本間ゴルフという会社に魅力を感じて集まっています。もちろん、ゴルフ業界のことや自社商材のことを勉強する必要はありますが、ゴルフが好きじゃないとできない仕事ではありません。
ただ、ゴルフが好き、体を動かすのが好き、という人が割合として多いのは事実です。もともとゴルフに興味がなかったけれど、本間ゴルフへの入社をきっかけに興味を持って「ゴルフを始めてみた」という社員も多いですし、「やってみたら楽しい!」という声もよく耳にしますよ。

HONMA(株式会社本間ゴルフ)

HONMA(株式会社本間ゴルフ)

事業内容 ゴルフクラブの製造・卸売・販売
ゴルフ用品・ウエアの製造・卸売・販売
ゴルフ関連サービス(クラブフィッティングやスクールなど)の提供
事業所 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー35階
設立 1959年2月18日
代表者 代表取締役社長 伊藤 康樹
従業員数 561名(2020年7月現在)
資本金 5億円
 

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