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2018.12.06

セミナー「女性活躍推進~女性のエンパワメントがファッション業界と社会を変える!~」レポート(第14回クリーデンス法人向けイベント)

多くの女性が活躍するアパレル・ファッション業界。
社会構造や女性特有のライフイベントが要因となって、そのキャリア形成が難しい、会社としてできることはないか、具体的な事例が知りたい…などのご相談を、クリーデンスにもお寄せいただいています。

そこで5月24日、女性活躍推進~女性のエンパワメントがファッション業界と社会を変える!~と題したセミナーを開催いたしましたので、その内容をレポートいたします。


【第一部】講演:ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション 尾原 蓉子氏

まず第一部として、ファッション関連分野で働く女性の活躍支援団体「ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション」の創立者である尾原 蓉子氏にご講演いただきました。

尾原氏は東京大学を卒業後、旭化成を経てニューヨーク州立ファッション工科大学へ留学。
1968年に「ファッション・ビジネスの世界」の翻訳出版によって、日本に<ファッション・ビジネス>の言葉と概念を初めて紹介しました。
以降はファッション・ビジネスの草分け的存在としてのご自身の体験を通じ、WEFの設立など、ファッション産業の発展と人材育成をライフワークとされています。
今秋出版された「Break Down the Wall―環境、組織、年齢の壁を破る」(日経出版社)では、キャリアを阻む「壁」をいかに打ち破るかを、自身の体験から得た教訓として執筆され、大きな反響を呼んでいます。

ファッション関連分野で働く女性の活躍支援団体「ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション」の創立者である尾原 蓉子氏にご講演いただきました

WEF設立のねらい

上述したように、アパレル・ファッション業界では多くの女性が活躍しているだけではなく、顧客も70~80%が女性です。
にもかかわらず、ビジネスの意思決定に参画する女性が極めて少ないことに危機感を感じた尾原氏は、WEFを設立されました。

ファッション業界は作るのも人、買うのも人、楽しむのも人。その<人>のうち、過半数を女性が占めています。
つまりファッション・ビジネスはピープル・ビジネスであり、それと同時にウーマン・ビジネスといっても過言ではありません。
生活者の目線をもち、感受性に富み、しなやかな柔軟性をもつ女性ならではの発想から生まれたビジネスも数多い現在。
その源となる女性のエンパワーメント(パワーアップ)を引き出だすことで、社会を変え、ひいては女性自身の幸せにもつなげる。それこそがWEFが目指す世界です。

女性管理職が増えない現実

とはいえ、現実社会では管理職など、意思決定の場にいる女性はごく少数です。
一般的に女性は管理職に就きたがらないと言われていますが、漠然とした消極的な感情ではなく、女性ならではの生活者の目線、つまり「責任と仕事の多さの割には給与は多くない…」という考えに基づきます。役職を名誉と捉えることの多い男性との違いは歴然です。

ですが、ここで重要なのは<女性か男性か>という二者択一の議論ではありません。
また、キャリア形成を考える際に話題になりやすい<仕事か生活か><チームか個人か><業務か夢か>といったテーマも同様で、いずれも両立・融合を目指すべきでしょう。

この両立・融合のためには自分に足りない能力を開発する必要があります。
例えば自信につながる専門能力、成長につながるリーダーシップ能力、より研鑽を積める経営管理能力など。
もちろん能力開発は女性に限った話ではありませんが、こと女性においては、まず専門能力を磨いて自分に自信を持ち、それから変革を成し遂げて後進育成にもつなげられる、リーダーシップ能力を磨くのが良いようです。

企業がするべきこと

では女性がこれまで以上に能力を開発し、目指すキャリアを実現するためには、企業はどのような働きかけをしたら良いでしょうか。

ある企業では社員を対象にアンケートを実施し、より具体的な<活躍のためのロードマップ>を作成しています。
例えば一口に出産と言っても、出産前の漠然とした不安と、出産後のパニックにも近しい忙しさ、さらに産休後期のそれぞれのモチベーションの違いなど、シーンはさまざま。
そこで事前のロードマップ作成を支援・制度化することで、企業としては多くの人が超えるべき難所を理解し、個人としてはより明確なキャリア形成の一助としているそうです。

これらの制度化には、まずは企業のトップ自らが「女性がより活躍できる会社にする」と宣言・実行することが不可欠です。
また女性自身も、明確なビジョンを持って業務にあたり、異動や昇進に対してもより積極的に向き合うことが肝要でしょう。


【第二部】パネルディスカッション

セミナーではこの後、尾原氏、株式会社ユナイテッドアローズ初の女性執行役員である山崎 万里子氏、クリーデンスでキャリアアドバイザーのマネジャーを務める細野 和歌子の3名が、パネルディスカッションを行いました。

セミナーではこの後、尾原氏、株式会社ユナイテッドアローズ初の女性執行役員である山崎 万里子氏、クリーデンスでキャリアアドバイザーのマネジャーを務める細野 和歌子の3名が、パネルディスカッションを行いました。

あらためて女性活躍推進とは

「女性活躍推進」という言葉についてはどのように捉えていらっしゃいますか?

山崎氏:
働きかたは多様ですが、ユナイテッドアローズではみんな楽しく活躍しています。
ですから改めて女性活躍推進と言われると、何だか活躍していないみたいで違和感を感じますね。
ただ意思決定の場にいる女性はやっぱり少なくて、女性比率は店長が33%、課長が15%なのに対して、役員はたった3%です。
ここは改善をしていくべきだと感じています。

女性は管理職に就きたがらないという定説もありますが、これについてはどうお考えですか。

山崎氏:
先ほどの講演の中で尾原さんもおっしゃっていましたが、私も同意見で、まったくそんなことがないと感じています。
ただよくあるのは、管理職のポストに女性社員を推薦すると、人事へはそれ以降音沙汰がないんですね。
確認すると「(推薦した女性は)管理職をやりたいとは思っていないと思う」って、実際に本人へは聞いていないんです。
だからこの定説は、男性によって作り上げられた都市伝説なのかなって思います。
女性は自己肯定が弱くて、誰かから背中を押されたいタイプが多いので、「出来る?」と聞かれて「出来ます」とは答えにくいけれど、「やってくれ」と言われれば「はい」と答えるのではないでしょうか。

尾原氏:
私が在籍していた旭化成ではかつて、優秀な女性を商品企画で嘱託で雇っていました。
ある時に人事から、彼女たちの社員雇用を打診されたので、同期と同等の給与水準やポジションまで引き上げてくれるかと聞くたら、「それは難しい」と言うんです。
本人たちに確認すると、「二流社員になりたくない」という理由で、嘱託の継続を選択しました。
制約がある中でもやりたい仕事が出来ている状況に満足して、自信を持っていたんです。肩書ではなくて、もっと大切なことが彼女たちにはしっかり見えていました。
働く場所や時間などの制約が、少しでも減っていけば、これから女性の能力は一気に開発が進むだろうと思います。

細野:
山崎さんがおっしゃるとおり、女性は自己肯定が弱くて、マネジメントをやりたいという志向を主張できる人は少ないですね。
だからこそアサインメントが重要になってくると思います。

企業がするべきこと

意思決定にかかわるレベルの女性が増えるために、企業は何をしたら良いでしょうか。

山崎氏:
背中を押してほしい女性は多いです。一人で奮闘できる人は少ないですから、一段か二段上の味方がいると良いでしょうね。
それから自己肯定が弱い女性には、例えば半歩ずつ勧めるようなサブポジションからお任せするのも効果的です。
つまり<絶対的な味方>と<物理的なセーフティネット>ですね。

尾原氏:
社外でのネットワークが作れる場所を設えて欲しいです。
情報交換や刺激を受ける場所は必要不可欠ですが、女性ではなかなか難しいものです。
男性は週末にゴルフに行ったりしていますけど、そんなぜいたくな時間の使い方ができる女性はあまりいませんから。

山崎氏:
そういった場を作ってあげるのも上司の仕事ですね。

細野:
それから、いきなりではなく半歩ずつのステップアップを作ってあげることでしょうか。

山崎氏:
はい。女性は完ぺき主義の人が多くて、躓いたときにちゃぶ台をひっくり返すかのように急に辞めたくなってしまう人が多いんです。
男性とパートナーを組ませるなどの工夫も必要ですね。

社会がするべきこと

それでは、社会全体がするべきことは何でしょうか。

山崎氏:
女性が休むための制度は増えてきたんですが、頑張るための制度は案外整っていないんです。
働きながら育児をする女性が頼れるのは、民間サービスのみというのが現実です。
男性が女性の働き方を考える機会を創出することが重要ですね。

細野:
クリーデンスでお預かりしている求人を見ても、女性の育休取得率を開示している企業は増えてきましたが、男性の取得実績は滅多に目にしません。

尾原氏:
女性の社会進出の逆は、男性の家事進出です。男性にも料理の面白さや子育ての楽しさを覚えて欲しいですね。
そのためには企業はその受け入れ態勢を持つこと、女性はそれに対する感謝の言葉と態度を表すことです。
お茶碗が綺麗に洗えてないことを指摘するのではなく、洗ってくれたことを感謝するとか、男性にやってもらうことを意識すると良いと思います。
自分がやった方が早いと考えないで、お金で解決できることは極力頼ったりして、自分の意識とともに周りのサポートも強化していくんです。

山崎氏:
育児休暇を取る男性もまれにいらっしゃいますね。
これを異色としない風土を作らないといけないし、昇進に差が出ないように整備しなくてはいけません。
まずは幹部クラスの男性から取得するのも大切です。


セミナーを終えて

女性・男性それぞれが認識の差や苦手な分野を埋めるように働きかけること、社会がその働きかけを受け入れることの重要性に気づかされたセミナーとなりました。

セミナー終了後、参加された方にご協力いただいたアンケートによると、各企業でも下記のようなさまざまな問題を抱えていらっしゃいました。

  • 「販売職の長期的なキャリアが確立していない」
  • 「本部と店舗での認識のズレが埋まらない」
  • 「時短勤務者が増加していることへの対応が遅れている」
  • 「社員の平均年齢も上がりつつあることへの対応が遅れている」

一方で下記のような感想も頂戴しており、女性活躍推進に向けた取り組みは、今後ますます活発になるものと思われます。

  • 「まさに直近の課題だった!モヤモヤしていたものが明確になった」
  • 「自分にも置き換えて考えることができ、良い機会だった」
  • 「これからは<頑張るための制度>づくりが重要だと気づかされた」
  • 「<社外ネットワークづくり>という提案はとても参考になった」

クリーデンスでは、今後もこのようなセミナーや講演会を企画してまいります。
テーマや登壇者についてのリクエスト、内容についてのご意見がございましたらお気軽にご連絡ください。
次回セミナーにつきましても、詳細が決まりしだい、メールや当ウェブサイト等にてご案内させていただきます。