アパレル企業特集

2020.01.08

BIRKENSTOCK、Quorinest(株式会社ベネクシー)<後編>

スタッフの給与ベースアップに踏み切ったベネクシーが
「好きを諦めさせない」ために行ったこと

ドイツ発の機能性シューズブランド「BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)」、永く愛用するほどに価値が高まる商品を取りそろえるセレクトショップ「Quorinest(クオリネスト)」を運営する株式会社ベネクシー。同社は2019年11月、社員の給与ベースアップを行いました。その背景には何があったのか?それによって今後目指したい企業の姿とは?代表取締役社長の小野 道夫さん、取締役副社長の海野 祥之さん、管理部 人事総務課 マネージャーの東 真紀子さんにお話を伺いました。

一人ひとりのスタッフの声を活かせるよう、バックアップ体制を作っていく

給与改定はいつからスタートするのでしょうか?

小野:2020年1月からの予定でしたが、いち早く現場課題を軽減させたく、2か月前倒しの2019年11月からベースアップをスタートしました。今は、実際のスタッフの声を聞きに、全国の直営店を巡回しています。

社長自ら全国巡回をされていらっしゃるのですね。スタッフのみなさんの反応はいかがですか?

小野:まだ全店舗は回れていませんが、モチベーションの上昇を感じます。食事しながら話をしていると、ホンネの意見をたくさん伝えてくれて、先日は「ブランド価値が下がるから、一部とはいえ夏のセールを止めたい」という要望を受けました。嬉しかったですね。

定価では売れないと嘆くブランドが多い今の時代に、その言葉は頼もしいです!

小野:店舗を今の規模まで増やすにあたっては、中央集権的に本社で物事を決めてルール化し、全店舗に通達する、というやり方で進めてきました。しかし成熟期、かつ人手不足の現状において、同じやり方ではまずいぞ、と店舗巡回を通じて実感しています。

それはなぜでしょうか?

お客さまのことを一番分かっているのは店舗だからです。
特に地方のお店は、その土地特有のお客さまがいらっしゃって、ブランドのファン、スタッフのファンをしっかり持っています。スタッフはその方々のため、そしてその先に結果としてある予算達成のため、必死で色んなことを考えています。しかし本社から何か声が挙がると、「その通りにやらないといけない」と、せっかく考えたこともフタをしてしまう。それはお客さまにとっても会社にとってももったいないことですし、何より本人のやりがいに繋がりません。

自分のアイデアや行動によって誰かが喜んでくれると、シンプルに嬉しいものですよね。

小野:一般的に商品=モノと考えがちですが、本来、サービスも商品の一部であるはずです。近年、“コト体験” “トキ体験” なんて表現されますが、わざわざ足を運んだ甲斐があった、とお客さまに感じていただくためには、“モノ” と “体験” の両方をお客さまに届けることが大切です。
店舗主体でそこまでのサービスクオリティが実現できれば、本来はセールなどしなくても、お客さまとスタッフ、全員が満足する体験ができるはずです。そのためにも、今回の店舗巡回で、前向きな意見やアイデアを持っているスタッフの声をたくさん聞いていきたいです。

単に給与改定の反応を見るだけでなく、次の一手のためのヒアリングでもあるのですね。

小野:あるスタッフが考えたサービスによってお客さまにご満足いただく。またあるスタッフの意見によって、社員の働きやすさが改善する。そうして店舗や会社がさらに良くなっていくと、スタッフも手ごたえを感じ、帰属意識が生まれ、会社の経営に直接参加している意識が高まる。長く活躍するというのは、そういうことの積み重ねによって成り立つのものだと思います。一人ひとりのスタッフの声を活かせるよう、バックアップ体制を作っていくことが、我々の今後のチャレンジです。

代表取締役社長 小野 道夫さん。元管理部長だからこそ、組織課題の重要性を重く受け止め、実行に移すことができたのかもしれない。

ベネクシーで身に付くスキルは一生使えるバリューの高いもの
長くやりがいを感じながら、人生設計が組める会社へ

全員が幸せになれるお店での体験を生み出すために、ベネクシーでは手厚いトレーニングを行っています。具体的にはどのようなことを実施していますか?

東:入社後すぐの研修においては、環境が変わることへの不安をできるだけ払しょくし、配属後スムーズに慣れるようなトレーニングをして、店舗に送り出すようにしています。販売職が初めての方もいらっしゃるため、まずは専属のトレーナーによる座学やロールプレイング、フィッティングを通じて一から接客について学びます。
配属後は店長や先輩スタッフによるOJT形式で様々な業務を覚え、ある程度下地が整った3~6か月後、ビルケンシュトックについて学ぶ2日間の専門講習を受けます。ここではビルケンシュトックの歴史、足の骨や筋肉の構造などを座学で勉強したり、実際にフットプリンターで測定したりと、より質の高いサービスを行うためのスキルを身に付けることができます。

海野:ビルケンシュトックの商品は足の痛みや疲れを予防する役割を持つため、スタッフ自身の知識や体験がないと、接客の説得力が出ません。そこで、「なるほど、だからビルケンシュトックの靴を履くと良いんだな」と実感するためのさまざまなトレーニングを準備しています。

とはいえ、そこで得た知識をそのままお客さまに伝えれば良いわけでもありません。目の前のお客さまがビルケンシュトックやご自身の足などについてどの程度の情報を持っていて、今回何を期待していらっしゃったのか、一人ひとりとしっかり向き合って、接客をカスタマイズする力も必要です。
お店の役割や販売スタッフの価値がどんどん変化しているこの時代、単に知識を詰め込むだけでなく、今以上にベネクシーらしい接客を行うための成長機会を作っていきたいと考えいます。

では最後に、ベネクシーとしてのこれからの成長についてお聞かせください。

東:少し前ですが、ある社員がベネクシーへの入社理由について、「ビルケンシュトックで働くことで自分自身のバリューが高まると思ったから」と話していたんです。私はそれを聞いて人事として感動してしまって、これから入社する方々にもそう思っていただけると嬉しいなあって。働くことで成長し、自信に繋がる会社にしていきたいですね。

海野:個人的には、モノを売って売上を増やせば多くの人が喜ぶ…というのはもう昔の考え方だと思っています。我々が今後目指しているのは、単にブランドや商品をご紹介してお買い上げいただくだけではなく、その後のアフターサービスも含めて、トータルでご満足いただけるサービスを提供することです。どれだけ愛用してくださるのか、どれくらいその人の生活にとって価値があるのか、そこまで想像しながら接客をすることを大切にしています。

そのためには色んな角度からモノを見て、サービスして、リテラシーを高め、接客力を上げていかなければなりません。
たとえば販売スタッフがアフターケアの部門に異動して、お客さまがどのように愛用しているのかを実感してまた販売に戻る。ビルケンシュトックからクオリネストに異動して、全身のコーディネートスキルを磨く。そうしたクロスファンクション的な異動はこれまでにもありましたが、さらに機動性を高め、ベネクシーの目指す「カイテキ」を実現していきたいです。

小野:「成長」と言うと、一般的には経営的な目線で数字を増やしていくことだと思いますが、今我々がメーカーからの期待も含め使命として捉えているのは、「いかにブランド価値を高めていくか」です。そのための第一優先は必ずしも売上金額ではなく、そこで働く人たちが成長し、またその実感が得られる組織にしていくことだと私は考えています。

ベネクシーで必要なスキルを身に付けるには時間が掛かりますが、だからこそ、一生使えるものです。年齢を重ねてもいつまでも輝きながら販売を楽しめるような仕組みを作り、頑張って成果を上げたらその対価が上がっていく仕組みを作ることで、長くやりがいを感じながら、人生設計が組めるような会社にしていきたいです。

ライフスタイルを「カイテキ」にするための4つの事業

BIRKENSTOCKフランチャイズ事業

ビルケンシュトックは1774年創業、240年以上の歴史を有するドイツのフットウェアブランドであり、その真髄は独自のインソール「フットベッド」にあります。解剖学的な観点から作り上げられたこの「フットベッド」は、足や関節、足裏を保護すると同時に足の筋を鍛え、自然な歩行と足の動きを理想的にサポートします。
ベネクシーはビルケンシュトック国内独占フランチャイズ事業者として日本全国に70店舗超の専門店を運営し、ビルケンシュトックフットウェアを通じて「健康で快適な暮らし」を提案しています。

Quorinest店舗事業

「これまで経験・体験したことのない新たな快適」をテーマに、ベネクシーによるオリジナル事業としてスタートした、セレクトショップ「Quorinest(クオリネスト)」。国内・海外問わず「快適」をキーワードに、独自の視点で厳選した製品群と世界観が特長です。

※「Quorinest」は、‘Quality’(上質)、’Originality’(独自性)、’Nest‘(集合場)を合わせたベネクシー登録商標です。

海外ブランド卸売事業

フランスのベレーブランド「LAULHERE(ロレール)」をはじめ、オランダのエコフレンドリーなレザーブランド「O MY BAG(オーマイバッグ)」、イギリスのナノテクノロジーを用いたレザー・ファブリックケアブランド「LIQUIPROOF(リキプルーフ)」など、一過性のファッションやブームに左右されない、永く付き合うことのできる機能と快適性を備えた国外ブランド製品を自社輸入し、日本全国へ展開しています。

修理 / アフターケア事業

「ご愛用いただくことで足に馴染んだ特別な一足を、より価値あるものへ。そして永く履き続けていただきたい…」その想いからベネクシーでは修理専門の自社工房を構え、お預かりしたフットウェアをスタッフが一足一足心を込めて修理しています。また、各ブランド様の製品検品や修理等の受託業務も行っています。

BIRKENSTOCK、Quorinest(株式会社ベネクシー)

BIRKENSTOCK、Quorinest(株式会社ベネクシー)

事業内容 BIRKENSTOCKフランチャイズ事業
Quorinest店舗事業
海外ブランド卸売り事業
修理・アフターケア事業
事業所 東京都千代田区九段北4-3-8 市ヶ谷UNビル 3F
創業 2002年5月
代表者 代表取締役社長 小野 道夫
従業員数 333人(2019年12月現在)
資本金 9,000 万円

アパレル企業特集 最新記事

アパレル企業特集一覧