アパレル企業特集

2019.11.01

株式会社オリエンタルランド

ディズニーの世界観を表現する担い手としての誇り
ショーコスチューム製作の裏側をのぞく

「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供します。」を企業理念に掲げ、東京ディズニーランド(R)、東京ディズニーシー(R)の経営・運営を行っています。実はこのオリエンタルランドで、アパレル業界出身の方々が活躍している仕事があるのをご存知でしょうか?今回は、ショーコスチュームのパターンを手掛けるパタンナーのYさんと、帽子や靴、アクセサリーなどの造形物を製作するチームのユニットマネージャー、Sさんにインタビュー。具体的な仕事内容やアパレル業界での仕事との違い、やりがいなどについてお伺いしました。

今回、この方にお話を伺いました!

コスチューミング部 ショーコスチュームプロダクショングループ ユニットマネージャー

Sさん

コスチューミング部 ショーコスチュームプロダクショングループ ユニットマネージャー Sさん

新卒でアパレル企業のパタンナーとして入社し、その後コレクションブランドを経て、結婚を機に退職。一度仕事を離れた後、復職のため仕事を探していた中でディズニーへの興味からオリエンタルランドへ応募し、2009年にショーコスチュームコーディネーターとして入社。2018年からはプロダクショングループにてユニットマネージャーとして従事。

コスチューミング部 ショーコスチュームグループ

Yさん

コスチューミング部 ショーコスチュームグループ Yさん

前職まではアパレル業界でパタンナーとして従事。初めてオリエンタルランドでパタンナーを募集した際の求人がたまたま目に留まり、興味本位で応募したところ、面接・実技を経て見事合格。2000年にオリエンタルランドへ転職し、ショーやパレードなどで着用するコスチュームのパタンナーとして長く活躍している。

頭の上から足の先まで、ショーで着用するすべてのコスチュームアイテムを手掛ける

ショーの企画がスタートしてから開催されるまでの流れについて、おふたりが担当するコスチュームに特化して教えてください

S:ショーにもよりますが、基本的にはショーがスタートする13ヶ月前から開発がスタートします。まず、ショーのコンセプト、演出イメージ、デザイナーが作ったコスチュームデザインといった完成イメージの情報が、私たちパタンナーや造形コスチューム製作へ共有されます。
それをもとにサンプル製作、実際の生地を使った本製作と進み、必要に応じて量産・サイズ展開を行います。ディズニーとしての世界観を保つため、デザイン・サンプル製作・本製作など過程では都度ディズニー社への承認が必要で、細かいチェックが入り、軌道修正します。コスチュームが完成したら、リハーサルで最終チェックして、本番を迎えます。

Y:ひとつのショーの中でも、CMやポスター撮影などのため先行して半年ほど前に完成させるアイテムもあって、常に五月雨でいくつもの案件が動いています。
また、新規コスチューム製作のほか、現在進行形で行われているショーや毎日公演しているレギュラーショーで使用しているコスチュームのメンテナンスも行っています。コスチュームは約半年から1年ほどで新しいものと交換しますが、それまではクリーニングや修繕など、日々メンテナンスを行っています。

ひとつのショーにつき、どれくらいの数のコスチュームを準備するのでしょうか?

Y:ショーの形態や規模によって様々ですが、少ない場合で20~30デザイン、多いと100ほどあります。ひとつのデザインの中には、着用するコスチュームだけでなく、帽子・靴・シューカバー・アクセサリーなど、頭の上から足の先までさまざまなアイテムがあります。それらを分担して一つずつ作っていきます。

S:コスチュームはパタンナーが担当し、それ以外の服飾雑貨やアクセサリーなどは造形チームで担当します。アイテムごとに分けると膨大な量になるため、社内だけでなく複数のパートナー企業様にもご協力をいただいています。

内製と外部委託とでどのような違いがあるのでしょうか?

Y:私たちは機密性の高い情報を扱っていますので、外部に知られてはいけないメインキャラクターやシークレットキャラクターなどの衣装などは必ず社内で手掛け、ダンサーさんが身に付けるものは外部委託する、といった区別をしています。


パターンの基本・服飾の知識がすべての土台となって今に活かされている

おふたりともアパレルパタンナー出身ですが、アパレル業界と現職の業務の違いと共通点をそれぞれ教えていただけますか?

Y:パタンナーの場合、パターン・製作の理論は同じなので、アパレル業界で身に付けた技術をそのまま活かすことができます。
コスチュームは普通の洋服ではありえないデザイン・構造のものを手掛けることが多々あり、また毎回そのデザインや構造は異なります。「どうやって具現化すればよいだろう?」とすぐに答えがでないこともしばしばです。その難題を実現するためには、服がどうやってできているのか、パターンの基本理解と、形にしていく技術が必要です。コスチューム製作はすべてが応用なので、基本がないとデザイン通りのコスチュームを作り上げることはできません。

なるほど、アパレル業界で培った「洋服づくりの基本」がデザイン通りのものを作るためには必要なのですね。

Y:一方で、元のデザイン画がすべてでもなく、デザイナーやプロデューサーがサンプルを見てイマジネーションを膨らませ、「じゃあこんな風にするのはどう?」「こんなこともできるかな?」と後からブラッシュアップしていくことも日常茶飯事です。フレキシブルに対応していく環境は、コスチュームならではじゃないかと思います。

S:私たちの仕事は「エンターテイメントの実現」なので、より良くしていくための変化は常にあります。そういう点では、デザイナーズブランドの感覚と少し似ているかもしれませんね。
もちろん、アイデアがあふれ出たとしても、前提として予算やスケジュールがありますので、そこはコーディネーターがコントロールしています。

思いつく限りの理想を盛り込みながら、現実的な落としどころを見つけて完成させていくのですね。

S:そのとおりです。また、季節・環境・演出などに合わせて、暑さ・重さ・耐久性・動きやすさなどを考慮する点も、ショーコスチュームならではですね。一見、普通のドレスに見えても、内側は驚くような作りになっていたりするんですよ。

Y:早着替えが必要なものは、演出上、何秒で着脱できるかを考えて作るので、普通の洋服ではまずないようなところにファスナーを付けたりもしますね。
また、ショーの時間と場所も大事です。昼公演であれば日光にあてて生地を選んだり、夜であれば暗い状態でステージ用のライトを当てて見たりなど、実際の環境で一番きれいに見えるよう考えています。

コスチュームのパターンはすべてが応用、という話がありましたが、造形コスチュームの場合、そもそもアパレルでは手掛けない素材・加工のアイテムがほとんどですよね。

S:そうなんです。布地だけでなくワイヤーやアクリル板を使ったり、有機溶剤、熱処理、ヒートガン、ペイント、染色をしたりなど、多種多様な素材を使い、加工をします。それらのすべてに長けている人はなかなかいませんが、スタッフがそれぞれ色んな強みを持って、協力し合いながら全員で作り上げています。スタッフは衣装業界やアパレル業界の経験者、美大や服飾系学校の卒業生などが多いですね。

造形コスチューム製作のスキル要件に、縫製、立体造形、生地以外の樹脂・金属・塗料素材の知識、染色、有機溶剤など、さまざまな記載があったので、これはものすごく幅広いものづくりをされているのだな、と感じていました。

S:その中のどれか、2つ3つでも経験があったり得意なことがあったりすれば、私たちとしてもとてもありがたいです。入社後は実務を通じてできることを増やしていただきますが、初めから何でもできる必要はありません。

そうした新しいスキルはどのように身に付けていくのでしょうか?

S:トレーナーとトレーニーという関係性で、先輩社員から教わりながら経験を積んでいただきます。まずは既存コスチュームのメンテナンスから入り、基本的な業務やどうやってものが作られているのかなどを学びます。少しずつ新規の製作にも携わり、発想力や技術力を身に付けていきます。


全員の力を合わせて、常に新しいことにチャレンジし続けていく

オリエンタルランドでの経験の中で、大変だったことや思い出深いエピソードをひとつ教えてください。

Y:ステージにいながら一瞬で変身する“引き抜き”という演出で使うコスチュームがあります。外側のコスチュームの中に、変身後のコスチュームを仕込んでおく仕組みで、外の衣装のほうが大きい場合は中を仕込みやすくて良いのですが、逆に中から大きな衣装が出てくる場合が大変で。初めて手掛けたときには、どんな素材を使ってどうやって実現しよう?と毎日ずっと考えていました。また、引き抜きなので一瞬で脱げるように作るのですが、意図しないところでうっかり脱げてしまってはいけないので、強度バランスも重要です。
試行錯誤しながら作り上げて、コスチューム管理スタッフに「こういう作りになっているからこうやって着脱させてください」と引き渡し、本番のショーが成功したときには心からほっとしました。

どうやって作り上げたのか想像もできませんが…発想力とロジックの両方が必要な仕事なのですね。

Y:経験の蓄積によって効率化できることもありますが、どれだけ経験しても「今までのやり方では実現できない」ことは必ず出てきますし、一度ではうまくいかないことがほとんどです。そこから最善の解決策を見つけて形にしていく、それがショーを作ることの大変さでもあり、醍醐味だと思います。

S:私は一度、手掛けた造形に不備があってすべて交換しないといけなくなったことがありました。すぐにすべてのキャラクターについている造形を回収し、カスタマイズし、次の日の演出に穴をあけないよう、色んなスタッフに助けてもらって交換しました。反省とともに、改めてエンターテイメントビジネスとして、油断してはいけないと感じた経験でした。

Y:コスチュームをクリーニングに出したら、箔がすべて取れて一から作り直しになってしまったこともありましたね。普通の服とは違う素材・構造なので、クリーニング屋さんも初めてで、どうしようもなくて。そうした失敗を経て、今は製作過程でクリーニングテストをするようになりました。
作り上げるまでにも様々なドラマがありますが、作り上げてからのドラマもたくさんあるんですよ(笑)。

ショービジネスならではの大変さと、それに伴う仕事のおもしろさを感じます。

Y:私たちの仕事は新しいことへのチャレンジの連続です。自身の技術力や思考力・発想力を武器に、くじけず諦めず何度でも挑戦していって、実現できたときには何よりのやりがいを感じます。
「自分で絶対に乗り越えて見せる」という気持ちは前提として必要ですが、決して一人ではありません。困ったら周りのスタッフが助けてくれますし、私も誰かの力になりたいと思っています。そうしてお互いに手を差し伸べ合って困難を乗り越えています。


働きやすい環境がクリエイティブの源
世界中から愛されるエンターテイメントを創り上げる喜びを

入社後、ディズニーについて理解するための研修などはありますか?

S:入社後、全社員必須でディズニーのフィロソフィーを学ぶ研修があります。ものづくりの観点においては、研修というよりも実務の中で学んでいくことがほとんどで、キャラクターごとに体形や動きの個性があるので、デザイナーと話し合いながらちょっとしたラインやシルエットなどにもこだわって造形しています。

エンターテイメントを追求する上で、こだわりの強さが時間に担保されることは多々あると思いますが、業務時間にはどのように影響していますか?

Y:エンターテイメントや衣装の世界って、夜も帰れず徹夜して…というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、当社は法令遵守に関してはしっかりマネジメントされています。

S:時期やタイミングによって波はありますが、繁忙期で月の残業が20~30時間、少ないと10時間を切るときもあります。リハーサルの立ち合い時には早朝・深夜に及ぶこともありますが、早朝・深夜手当も付きますし、施設の営業時間に合わせて2シフト制を組んでいるため、毎日長時間仕事をしないといけない環境ではありません。会社の平均有給消化率も83%と高く、プライベートの予定がある際には業務調整してちゃんと休むことができます。

Y:女性割合の高い職場なので、産休・育休・時短勤務を活用しているスタッフも多くいます。離職率が低く、年齢層も私たちの部署は20代から60代までいて、バラエティ豊かですね。

公私ともに充実した生活が送れる環境が整っているのですね。お二人が所属するコスチューミング部の雰囲気はいかがでしょうか?

Y:作業中は黙々と手を動かしますが、メンバーでコミュニケーションを取り合うこともよくあります。メンバーはそれぞれ異なるアイテムを作っているので、どう作ろうか悩んだときは「こういうやり方はどうかな?」とアイデアを出し合ったり、お互いに見せ合って「素敵ね」「かわいいね」と感想を言い合ったりして進めています。
また、新しい技術を取り入れていくことにも積極的に取り組んでいます。

たとえばどういう技術でしょうか?

S:一例ですが、これまでは一つのパーツを作るにも金型から作っていたのですが、最近、試験的に3Dプリンターを導入して、コストと時間を削減に向けて取り組んでいます。

Y:コスチュームに関しては生地の転写プリントによって、コストと時間が大幅に短縮できました。以前は一反単位で染色していたため、生地が大量に余ったり、予算内ではあまり多くの柄を作れなかったりしていましたが、無駄がなくなったことで、よりカラフルで凝ったコスチュームデザインが実現できるようになりました。今やほとんどのコスチュームで転写プリントを使っています。新技術によって昔できなかったことができるようになるのは楽しいですね。

今後チャレンジしていきたいことなどはありますか?

Y:新しい技術を取り入れていくスタンスは今後も続けていきたいです。たとえば今は、3D映像によるコスチュームフィッティングにチャレンジしています。コスチュームとキャラクターのデータを3Dスキャンして360°チェックするというもので、これが実用化できるとフィッティングにかかるサンプル製作の時間やコストを大幅に削減することができます。

S:以前からアイデアはあったのですが、偶然その方面に強いパタンナーが入社してくれて、社内で取り組んでいます。新しいことにチャレンジすると、その3倍くらい問題もあふれ出てきますが(笑)、今それを一つ一つクリアしていきながら進めています。将来的には、ショーやパレードが再現できるといいな、という話もしているんですよ。

最後に、ファッション業界で働くみなさんに一言ずつメッセージをお願いします

Y:私たちがコスチューム一着に掛ける熱量は計り知れません。企画から世に出るまでには何度も確認やブラッシュアップや承認作業が発生しますが、誰も妥協せず、お客さまに楽しんでいただける表現ができるまで試行錯誤し続けています。そこまでこだわり抜ける環境で働けることが一番のやりがいですし、そのスタンスがあるからこそ、ディズニーが長く、世界中から愛される存在なのだと思います。当社でしか経験できないダイナミックな仕事と感動をぜひ一緒に味わってみませんか?

S:ショーには何十人、多いと100人ものスタッフが関わっており、様々なスタッフからコスチュームに対するアイデアや意見が私たちのところに届きます。その要求はとても高いものですが、各所とコミュニケーションを取りながら楽しんでトライすることができる方と一緒に働きたいなと思っています。 強い気持ちを持って作り上げたものがディズニーの世界観を表現する。その担い手の一人だというところが、私たちを含め、当社のスタッフのモチベーションになっています。それは間違いなく、オリエンタルランドでしか味わえないやりがいです。その楽しさを一緒に体感したいですね。ぜひお待ちしています。

おふたりにASK!

おふたりともアパレルパタンナーからの転職となりますが、オリエンタルランドへの転職の決め手は何ですか?

Y:私はスタートがどんなパターンを引くんだろう?という興味本位だったので、採用通知をいただいたときには「衣装は経験がないけど大丈夫かな」という不安がありました。アパレルパタンナーに不満があったわけではなかったので正直迷いましたが、新しいチャレンジができるチャンスをいただけたので、やってみたい!という思いの方が勝って入社しました。

S:私はもともとディズニーに興味があって求人を見つけ、コスチュームを作り上げるにあたりスケジュールや予算や関係者の連携などを調整するコーディネーターという仕事に就きました。業界は違いますが、アパレル業界での経験が活かせると感じたので、自分のスキルや知識を好きなディズニーで活かしたいなという思いでした。

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株式会社オリエンタルランド

株式会社オリエンタルランド

事業内容 テーマパークの経営・運営および、不動産賃貸等
事業所 本社:千葉県浦安市舞浜1番地1
設立 1960年7月11日
代表者 代表取締役社長 上西 京一郎
社員数 3,411名(2019年4月現在)
資本金 632億112万7千円

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