アパレル企業特集

2012.12.17

ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)

ユニクロR&D(デザイナー・パタンナー)統括責任者 勝田 幸宏氏ロングインタビュー。世界中のお客さまから評価される「究極のものづくり」にチャレンジし続ける【前編】

今回、この方にお話を伺いました!

ユニクロ R&D統括責任者

勝田 幸宏氏

ユニクロ R&D統括責任者 勝田 幸宏氏

伊勢丹での販売、バイヤーなどを経験後、バーニーズニューヨークへ出向しリテール全般を担当。
その後、ラルフローレン、バーグドルフ・グッドマンを経験し、2005年にファーストリテイリング入社。現在はR&D(商品開発)部門の責任者を担う。

ファッションは自分を表現する最強の手段

お話を伺う上で、まず勝田さんの考える「ファッションの本質」についてお伺いしたいと思います

ファッションは自分の生き様や考え、スタイルを表現する、最強の手段ではないかと考えています。時には自分のモチベーションや気持ちを上げていくというマジックを持っている。ファッションと言うと、「洋服だけ」のように言われることもありますが、私はそうではなくて、洋服とその人自身がセットになって、オシャレさ、かっこよさ、かわいさ、といった魅力につながると思っています。

洋服は、本来は着るものですが、一方で「ブランドに着られている」「服によって自分の気持ちや自分自身が変えられてしまう」「自分のアイデンティティがなくなってしまう」というまったく逆のこともあるのが事実です。服と人とのバランスが大切で“服に着られている”状態ではなく、“服を着ている自分を楽しむ”こと。
それが自分の考えるファッションの本質であり、ユニクロでものづくりをする上でまず根底にある考え方です。


お客さまがまだ気付いていない、潜在的な欲求に応えるのがビジネス

ファッションが好きという思いとファッションビジネスの両立

勝田さんは無類の洋服好き、と伺いました。その想いとファッションビジネスを両立させるコツは何でしょうか?

自分に限らず、この業界のほとんどの方が洋服が大好きなのではないでしょうか。しかしシビアな言い方をすると、「好き」という思いだけでビジネスはできません。具体的には何が必要か、それは“お客さまのことを常に考えられるかどうか”ということです。私もこれまで、前職も含めた販売やバイイング経験の中で、「自信を持って出したものが売れなかった」ことが何度もありました。そういった時は、後から冷静に振り返ってみると、お客さまから求められるものをきちんと提供することができておらず、個人的な熱い思いが先行してしまっていたんですね。

洋服に限らずビジネスは「お客さまに受け入れられる」ということ。お客さまからの評価が高ければ、商品の値段など関係なく買っていただけるし、その逆も然りです。
では、お客さまの声に耳を傾ければ良いのかというと、さらにもう一歩踏み込むことが必要です。
特にこれだけ“モノ”や“情報”が溢れ返っているこの時代、お客さまが求めているものを出すのでは遅い。お客さまがまだ気付いていない魅力的なアイデア、潜在的に求めているものを掘り起こして開発し、「これがあればもっとあなたの生活が豊かになりませんか」「これを使ってもっと楽しい生活を」というものを提供していかなければなりません。そしてお客さまに「今まで気付いてなかったけどこういう商品もあるんだ、いいよね!」と良さに気付いていただくことが大切なのです。


世の中で評価されている商品は、想像している以上に時間もエネルギーも掛かっている

お客さまが潜在的に求めている商品を生み出すため、どのようなものづくりをしているのでしょうか?

イノベーションというものは、ある日突然頭の中に革新的なアイデアが降って沸いてくるというものではありません。仮説を立てて開発し、実際に売ってみてその結果を仮説と比較し検証、そしてまた改良する…この作業を何度も繰り返す過程があり、あるタイミングでそれが集大成としてヒットに結びつくものだと考えています。
ユニクロの商品で分かりやすく例を出すとヒートテック。あるタイミングで突然爆発的に売れましたが、実は開発に10年近く掛けていて、商品化してからも、素材からシルエットなど、ミリ単位で細かなプロセスを重ねて、今もなお改良を繰り返しています。

世の中で「これはいい」と評価されている商品は、一般に思われている以上に時間とエネルギーが掛かっています。これが今考えられるベストだ!と思っても、いざ販売を開始したらさらなる改良点が必ず出てきます。失敗もあります。それをまた反映して来年に活かす。そのサイクルを我々はとても大切にしているのです。
そこまでして作り上げた商品だから簡単には真似ができません。ヒット商品には類似品がつきものですが、本質を見ると足元にも及ばない、真似できないものづくりをわたしたちは目指しています。


タイムレスに着続けることのできるシンプルなデザインを実現する

タイムレスに着続けることのできるシンプルなデザインを実現する

ユニクロのアイテムをデザインする上でのこだわりをお聞かせください

ユニクロの考えるデザインは「コンポーネントウェア」、つまり他の洋服と組み合わせてスタイルを作るベーシックな洋服です。このコンセプトは、先ほどお話した、着る人一人ひとりの個性を出していただきたいという思いが根底にあるので、デコラティブな個性のありすぎる洋服ではなく、デザインをそぎ落とす“マイナスのアクティビティ”というテクニックが必要となります。
ところが一方では素材や着心地、シルエットといった、ぱっと見では分かりづらいところでトレンドや細かなこだわりをたっぷりと盛り込みたい、つまり“プラスのアクティビティ”も詰まっており、マイナスとプラス、矛盾したものづくりをしていかなければなりません。これがとても難しい。

洋服を分かっている人でないとできない、高度なスキルと経験が求められますね

はい。デザイナーやパタンナーは、こだわりをたっぷりと詰め込みながらも余計なものをそぎ落とし、さらに良い商品を作り上げていくため、必死で考えなければなりません。そのためには、知識や経験、スキルをもとにした“引き出し”の多さが重要となります。
そのようにして作られた服は、完成度が高く、大事に扱えばタイムレスにいつでも新鮮な気持ちで着ることができます。3年前、5年前、10年前に買った洋服が、トレンドに左右されず、色褪せることなく変わらない魅力を放ち続けます。
たとえば+Jは、それを高いレベルで実現できた例のひとつです。ある突出した稀有な天才がいないと実現できないのかというと、そうではありません。

社内ではよく「100メートルを9秒9で走るのは才能がないと無理だが、みんなでやる“商売”だと、100メートル9秒9で走れる可能性がある。それは、チームを組んで全体のバランスや、それぞれの能力を強化していった結果、方向さえ間違っていなければ、100メートル9秒9で走れる可能性が出てくるということだ」という話をします。ユニクロには、突出した天才はいないかもしれませんが、質の高いものづくりができる「チーム」があります。全員で力を合わせて引き出しをたくさん持ち寄り、才能を発揮できれば、高いレベルのものづくりができる、そう考えています。私たちはそこを妥協しない、ある意味究極のものづくりだという自信を持って取り組んでいます。

ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)

ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)

事業内容 商品企画・生産・物流・販売までの自社一貫コントロールにより、高品質・低価格のカジュアルブランド「ユニクロ」を提供する製造小売業(SPA)
事業所 東京本部:東京都港区赤坂9丁目7番1号 ミッドタウン・タワー
設立 1963年5月
代表者 代表取締役会長兼社長 柳井 正
従業員数 18,854名(2012年8月末現在)
資本金 102億7,395万円

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